音楽を視覚化することでよく聴く、というワークショップを考えてみる

コーネリアス、民謡、バロック音楽など、色々なジャンルの音楽を視覚化した映像表現を行なってきたが、この手法を用いてワークショップを行ったり、授業で学生さんにトライしてもらったりすることには全然興味がなかった。

自分の方法を人に伝えて作らせても劣化コピーしか作れないだろう、彼ら自身のオリジナルな表現に達することができないなら意味が薄い、と考えていた。

しかし最近「美術作品の対話型鑑賞」という授業方法を学びつつあって、考えが変わってきた。
この方法は、ひとつの作品を皆でじっくり見たあと、気づいたことや疑問、どんな印象をもったかを話し合う。その際「なんでそう思った?」と聞かずに「どこからそう思った?」と問う。なんで?だと個人の解釈部分が多くなり言葉が絵を離れることもあるが、どこから?だと、絵のどの部分を観察してそう思ったかが明確になり共有しやすい。そして皆で共有することで自分が気づけていなかった他者の指摘に驚いたりしながら、隅々まで観察できる。見る、考える、話す、聴くというプロセスで学ぶ。MoMAのVisual Thinking Strategiesの応用とのこと。

この方法は音楽にも適用できるだろう。1曲をパートにわけて、この部分がもたらす印象はどうか?それは音色やメロディやハーモニーなどの「どこから」そう感じたか?など1曲を細かく腑分けしてじっくり聴くことが可能だ。より深い聴き方ができる。(たぶんそういう授業例は存在する)

実は自分がやってきたことは、細かく分けて聴くという意味でそれに近い。ある1曲を何度も何度も聞いて、使われている楽器の音色、メロディ、リズム、構成、印象など焦点を変えながら聞き分け、歴史的背景や作者の人生を調べるなどして、そのあと絵で表している。

自分以外の誰でも、適切なガイドがあれば可能だ。そして、絵で描くのは、言葉で記述するより話が速い部分がある。メロディ・音色・リズムがどう変化したかはとくに伝えやすい。ある基準となる方法論があれば誰でも描いてみることができるだろう。(雰囲気や印象は言葉のほうが勝る部分もあるだろう)

その結果できあがったものが重要なのではなく、描くためによく聴く/よく聴いたことを描く、そのプロセスがひとつの音楽を深く理解して楽しむための助けになるだろう。

ちょっと、いつかやってみたいという気持ちが生まれたのでメモとして記した。

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