応力の定義の混乱

 応力の定義が分野ごと・研究者ごとにバラバラで困っている。ざっくりいうと, 応力は土や水や豆腐のような物体の内部で働く, 面積あたりの力なのだが, 面の向きによって力の向きが違う。そこでxyz座標系の上で, x軸に垂直な面に働くy軸方向の応力をTxyと書いたりするのだが(1), これをTyxと書く流儀(2)がある。さらに, 面に垂直に働く応力の向きを, 「引っ張り」の方向をプラスにとる流儀(A)と, 「圧縮」の方向をプラスにとる流儀(B)がある。めちゃめちゃである(泣)。

 これ, 以前から気になっていたので, 図書館で調べてみた。土質力学の本は(1)(B), 材料力学・水理学・地震学の本は(1)(A), 物理学(連続体力学)の本は(2)(A)だった。モーメントの釣り合いや角運動量保存則を前提にすればTxy=Tyxが成り立つので(1)と(2)は実質的な違いは無い。しかし, 初学者にまず定義をきっちり教えてあげるには, 「結局どっちでもいいんですよ〜」というのはかえって混乱を招く。というわけで, 多数決で(1)(A)でいくことにしよう。

 ここで気になるのが「圧力」と「応力」の違いである。ともに「力を面積で割ったもの」なのだが, 圧力は面に垂直に力がかかる場合だけに使う。で, 圧力は当然, 圧縮方向がプラスである。ところが上のように(1)(A)で応力を定義すると, 応力は圧縮方向はマイナスになる。つまり圧力と(垂直)応力で符号が逆になってしまう。ここはたぶん初学者は躓くに違いない(泣)。

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