『ジンジャー スナップス』が好きすぎて

皆さんお久しぶりです。

突然ですが、『ジンジャー スナップス』という映画をご存じですか?
この映画、三部作構成なのですが、けっこう厄介なことになっているのです。
(以下ストーリーのネタバレがあります)

まずは一作目
『ジンジャー スナップス』(原題: Ginger Snaps) (2000)


まずこのシリーズ、カナダ産なのですが、一作目はそのカナダの架空の田舎町「ベイリーダウン」というところが舞台です。一才違いの姉ジンジャーと妹ブリジットは、妹が飛び級したことで同級生。しかしこの二人、完全に学校のはぐれもの。ある時、ホッケーの試合中ブリジットに体当たりしたクラスメイトに仕返しするために、動物の死体を偽装して脅かしてやろうということになります。
奇しくも町では「ベイリーダウンの怪物」という正体不明の何かが犬を食いちぎる不審な事件が相次いでいました。
イタズラを仕掛けようとしていたとき、ジンジャーがその「怪物」に襲われてしまいます。それは狼人間で...次の満月までに変異を止める治療法を見つけようと妹のブリジットが奔走します。

一作目は「フェミニズムホラーの先駆け」とも言われており、身体の変化のメタファーとして人狼伝説が使われています。脚本家はカレン・ウォルトンという女性で、当初ホラー映画での女性の描かれ方に疑問を感じていたため脚本を書くのを一度は断ったものの、監督のジョン・ファーセットから「だからこそ新しい視点で書いてほしいんだ」と説得され書き上げました。評論家から高い評価を得て、2000年のカナダの映画興行収入年間5位を記録しています。

しかしアメリカではそうはいきませんでした。配給会社も決まり、全米公開も決まりかけたところに、コロンバイン銃乱射事件に端を欲した高校での銃乱射事件が相次ぎ、「ハイスクールにおける暴力描写」を理由に劇場公開が見送られてしまいます。銃のシーンは一度も出てこないのですが...

カナダで公開された翌2001年、アメリカのケーブルチャンネルHBOで放送され話題を呼びます。そしてDVDが発売され、カルト的な人気を誇るようになります。日本でもそれを機にDVDが発売されました。

しかしこの一作目、レンタルも配信もありません。DVDも再販されておらず、中古もかなりの値段がついてしまっています。日本での配給権が切れているのでしょうか...非常にもったいないです。

二作目
『ウルフマン リターンズ』(原題: Ginger Snaps: Unleashed) (2004)


二作目は一作目の後から始まります。完全に続き物です。一作目のラストでジンジャーを救うべく自らも狼女になったブリジットは、トリカブトが治癒になるかもしれないという希望の元逃亡生活をしています。しかしある時トリカブトを過剰摂取してしまい、倒れているところ女性の薬物依存症患者のリハビリセンターに入れられていました。
しかしこのリハビリセンター、管理もなってないし変態悪徳所員タイラーが入所している女性から性的行為をさせる代わりにドラッグを与えるという腐りっぷりです。そこに現れる不思議な少女。ゴーストと名乗る彼女は、ブリジットが狼女であることを信じ、脱走を助けます。しかしこのゴースト、ただ者ではないのです。

一作目とは違い、一気にダークでおぞましいホラーへと舵を切ります。青春要素もあった前作からするとそのダークさは想像以上です。一作目のカルト的人気の高まりから劇場映画として作られましたが、その作風の変化もあってか思うような興行収入をあげられませんでした。そしてアメリカではこれもDVDスルーとなります。

日本では配給会社が変わり、2006年に『ウルフマン リターンズ』のタイトルでリリースされました。完全にベニチオ・デル・トロ主演の同名映画のパチもんとして、今でもしっかりレンタル屋にならんでいます(笑)

三作目
『ウルフマン』(原題: Ginger Snaps Back: The Beginning)


三作目は、二作目と同時進行で撮影されたエピソード0です。舞台は18世紀のフランス、道に迷ったジンジャーとブリジットの姉妹(一作目の祖先とされています)が、要塞のような建物に助けを求めるところから始まります。作風はこれまた一作目とも二作目とも違う、ダークファンタジー風味です。エピソード0ですがさすが二作目(=完結編)と同時制作されただけあって、単なる前日譚ではなくちゃんと1と2にストーリーが繋がってきます。残念ながらこれは二作目の売れ行きが芳しくなかったため、初めから本国カナダでもDVDスルーとなってしまいました。

ここで厄介なことが起きてしまいます。本来の一作目である『ジンジャー スナップス』はレンタル不可、ジャケもタイトルも全く違う『ウルフマン リターンズ』と『ウルフマン』はレンタル可です。しかしこのタイトルだと、三作目の『ウルフマン』の方が一作目だと思ってしまいますよね?そしてこれは先述の通りエピソード0にあたるので、肝心の一作目を飛ばした状態で『ウルフマン リターンズ』をエピソード0の続編と思って観てしまいます。するとストーリーはなんのこっちゃになってしまい、全く筋が通らないのです。こんなのダブル、いやトリプルでもったいない!!

とはいえこの映画、かなりの掘り出し物で、ホラーやゴシックものが好きな方なら観て損はありません。一作目がプレ値になってしまっているのがちょっとハードルですが、それでも買って損はありません。ジンジャーとブリジットを演じるキャサリン・イザベルとエミリー・パーキンスも素敵な女優さんで、映画でも姉妹役をいい化学反応で熱演しています。是非ともトリロジーとして連続して観てほしい作品です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?