#読書記録「ツナグ」

ひとりだけ、死者に会えるなら誰に会いたい?

使者(ツナグ)に依頼をすると、一夜だけ死者と会うことができる。
それは魂の会話やイタコ的なことではなく、一夜だけ実体をもって現れる。
ただし、生者が死者に会えるのは生きているうちで一人だけ、一度だけ。

自分だったら誰に会うのだろう…と考えながら読み進める。
私はまだ両親も友人も健在なのでその権利を使わないだろうと思う。
フィクションだけれど、「もしそんなことがあったなら」と考えてしまうストーリーだった。

この作品は5部の連作仕立てになっている。
そこで、現実に居たら敬遠されがちなタイプの人間の表現に引き込まれる。
意地っ張りな言動の目立つ長男気質の男性や、自身が真ん中に立っていないと気が済まない女子高生。そんな彼らの心中に共感する。

短編が最終的にはひとりの男の子、使者とつながってくる。
クライマックスの展開がやるせなく、読み進めるほど落ち込んでいた時に、救いが用意されているので読後感が気持ちいい。
辻村深月先生の作品は、ラストで後悔を希望に変えてくれる安心感がある。

Amazon Primeで映画も観れるみたいなので観てみたい。
そして、調べたらなんと小説に続編があるそう。これは読まなきゃ。

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