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コンサルタントの実像#1

コンサルタントの解像度を上げるために、実像シリーズ第一弾を書いてみました。


コンサルは中長期的に下降トレンド


コンサルタントの定義

コンサルタントといっても、その定義する領域は非常に多いです。
よく知られているところでいえば、戦略コンサルタント、業務コンサルタント、IT・システムコンサルタント、人事コンサルタントなど企業活動の機能領域で区切られる呼称があります。

戦略は全社戦略や事業戦略、中期経営計画等のトップアジェンダを扱い、業務は営業、経理、事業部のオペレーション改善やシステム導入のプロジェクトマネジメントを扱うとされることが多いです。

大枠では間違っていないのですが、デジタル化の急速な進展やナレッジのコモディティ化に伴って、コンサルティングという業界そのものが非常に曖昧なものになりつつあり、高級人材派遣と揶揄されるのも一面では正しいと言えます。

戦略ファームであってもIFRS導入案件のPMOをしたり、SAP S/4 HANA導入のプロジェクトマネジメントを実施する人も増えているように、機能領域で語れるほど、もはやコンサルビジネスは隆盛ではないのが現状です。
各社戦略~業務~システムまで手を広げていかないと生き残れない時代であるため、業務請負人としての性格が強くなってきています。

保守本流の領域では食っていけない

そもそも本質的な戦略策定や複雑な会計・法務処理に関して的確なアドバイザリーを提供できる人材は多くなく、多くのコンサルタントが掲げる自分自身の専門領域についても、単にそういった案件に多くアサインされてきたというだけで、自分自身でロードマップを描いていくことができる人材はパートナーであっても少ないのが現実です。
また、そうした領域は事業会社内部でもナレッジが蓄積されており、外注案件自体(少なくとも金額ベースでは)減少傾向にあることは間違いないでしょう。

純粋な戦略や会計・税務・法務アドバイザリーはフィー自体も価格競争に陥り、稼げなくなってきているというのが実情で、シニア層の中にはそうした金にならないビジネスはやらないという人も多いです。
若手の中には、パートナーが戦略案件を持ってこないからダメだと主張する人もいますが、そもそも金にならない、儲からないビジネスであるため、自身のセールス目標を鑑みてあえてスルーすることも多いのです。

例えば監査法人のアドバイザリー部門であれば、複雑な会計処理やM&Aの財務デューデリジェンス、新リース基準やIFRS/USGAAP導入支援を想像する人も多いでしょうが、そうした案件は一部であり、SAP導入やESG案件といった非財務領域の案件が大部分を占めています。

中長期的には間違いなく下降トレンドであるコンサルティングビジネスですが、ここ10年程度で業界に参入する人材は非常に多くなってきています。
戦略や高度制度対応といった領域のパイは増えていない中、大量に抱えた人材はどこにいくのか、といえばシステム導入一択になります。

システム導入は金の成る木

なぜ昨今のコンサル企業がこぞってDX案件を実施するのかというと、システム案件は大量の人材を長期間アサインできるから、というのが答えです。

システム導入というと実務経験が無い人からすれば想像が付きにくいかもしれませんが、既存の業務を洗い出し、要件定義を行い、ベンダーを選定し、構築・保守スキームを検討し、実装、テスト、改善と非常に多くの部署と人材を巻き込んで行う全社的なプロジェクトになることが多いです。

特にオンプレミスからクラウドに切り替えるのではなく、既存のレガシーシステムから一気にSAPクラウドへ切り替える場合は、クライアント側にも知見のある人材は少なく、何をどう決めたら良いのかがわからない状況も多々あります。
恐ろしいことに、アサインされているコンサルタント側もシステム導入に通じている人材は非常に少なく、チームリーダー(各タスクフォースのリーダー)でさえも調べながら、試行錯誤しながらプロジェクトを推進しています。

しかもこうしたプロジェクトは短期間で終わらず、2-3年、長いと10年くらい継続することはよくあります。新卒コンサルタントがジュニアでアサインされて全く同じプロジェクトを10年続けた結果、マネージャーになっているというのも総合ファームでは良く聞く話です。

つまり、コンサルティングファームのシニアの立場としては、長期的に安定して稼げるシステム案件を取ることが自分の評価を高めることになるため、もはや純粋な戦略などやってられない、ということになります。

ジュニアとシニアの意識の乖離はここにあって、転職してきた人材が短期間で離職していくことが多いのも必然だと思います。
面接時と聞いていた話と違うということが多発するのは、こうした現実を知る機会があまりないからでしょう。




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