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U.S.CPA考察②取得後のキャリア

USCPAを取得した後にどのようなキャリアパスがあるか、実際に現場でどう活かすのか、について解説します。
自分自身で実際に働いた体験と各企業で面接通過(内定)及び、フォロー面談にて詳細にヒアリングした結果を基に考察します。


監査法人のケース

監査チームと財務会計アドバイザリーチーム

監査法人では実際に働いたことはありませんが、IFRS導入プロジェクトで実際に協業(自身は決算早期化/業務効率化やPMOのロール)した経験を基に記載します。

監査法人には4大監査法人共通で大きく2つの領域があり、会計監査を行うチームと財務会計アドバイザリーを行うチームです。
会計監査は主として上場企業クライアントの財務報告や内部統制が会計基準に照らして合理的かどうかの確認及び意見表明を行う作業であり、公認会計士が独占的業務を許されており、1丁目1番地の職務です。

財務会計アドバイザリーは監査先以外のクライアントに対して、IFRS導入やUSGAAP導入、新基準対応等の制度会計対応及びそれに伴う決算早期化や決算効率化、システム導入に加えて、M&Aにおける財務DDやPMI支援、最近ではESG財務戦略(長期的な価値創造を行う未来オプションの検討=CSV活動を実現するためのファイナンス戦略。最近話題のSDGsは環境・社会課題を解決する具体的な事業機会のこと)策定など、財務/非財務含めたCFO機能のアドバイザリーの位置づけです。

USCPAの割合と業務

監査法人におけるUSCPAの割合はマジョリティではないですが、そこまで少数派でもないようです。だいたい20%くらいの割合でいると思われます。
監査チームにも当然いますが、財務会計アドバイザリーチームの方がUSCPAの割合は高くなっています。
理由としては、USCPAは新卒入社の割合は少なく社会人経験のある転職者が多いため、新卒から育成する傾向の強い監査チームでは転職時の年収が現職より下がる可能性が高いからかもしれません。

一方で財務報告アドバイザリーに関しては10人いれば1-2人程度はUSCPAだったという体感があります。
マネージャー以上でも一定数いましたので、USCPAとJCPAで業務内容が異なったり、昇進に差が出たりといったことはありません。ちなみに財務会計アドバイザリーチームでは会計士資格がないスタッフも採用されています。

また、JCPAでは英語に苦手意識のある人が多いのは事実で、シニアマネージャーやパートナーであっても英語会議はもちろん英語資料作成にもアレルギーのある方が結構いる印象でしたので、グローバル案件へのアサインに関してはUSCPAが有利に働くこともあると思われます。
ただ、英語に関しては日本/米国会計士に関わらず、個人次第の側面が強いので英語スキル向上は誰もが目指すべきだと感じていました。

一部JCPAの中にはUSCPAを認めたくないという人もいて、USCPA合格後に未経験で入社して思うようにパフォームしないと「USCPAだから…」と思われることも0ではないです。
やはり監査法人の特徴として、新卒のJCPAが主流(前例)であるため、USCPAで未経験転職をする場合はしっかりと成果を出していくことで信頼獲得をしていくことが賢明です。

会計系ファームのケース

財務会計コンサルタント

USCPA取得後のキャリアとして監査法人系のファーム(BIG4)における財務会計領域のコンサルタントが多いと思われます。

業務内容としては、クライアントが経理・財務組織であり、会計システムの導入やオペレーション最適化などがほぼ100%です。その一環として経理人材のタレントマネジメントやSSC設立支援があり、ESG財務戦略に基づく会計システム刷新なども増えつつあります。
財務会計分野におけるM&AファイナンスやPMI、高度財務戦略を扱うのではなく、企業の経理組織の改善/高度化の計画策定や業務委託といった認識で問題ないです。

したがってクライアントに対して外部の立場から毅然とした態度で提言するコンサルティングではなく、経理組織の御用聞きに近い形となり、クライアントに寄り添う形での協業になります。当然クライアント社内の力学に従い、上層部に意思決定をしてもらうための根回し等の働き方が求められます。

USCPAは少ない

こうした組織では特に会計系の資格を要求されていませんので、CPAの割合は少ないです。
監査法人勤務の後、転籍/転職してくるJCPAは100人中20人くらいいますが、USCPAは肌感覚で10人未満というのが実態でした。
スタッフ層についても簿記2級までは取得が奨励されていますが、それ以上のファイナンススキルは個人次第です。

したがって会計的な素養という側面では、監査法人に劣っており、経理組織の改善という専門性?を身に付けていくことになります。コンサルティングファームではありますが、事業会社の経理部の企画チームと同等の経験を積むことになりますので、アップサイドのスキル獲得には直接的に結びつくことはあまりないと個人的には思っていました。

USCPAの取得を目指す人は、財務諸表を分析して改善策やトップライン向上、管理会計、プロジェクトファイナンスなどを志向されている割合が多いと思うので、よく考えてから転職すると良いでしょう。

事業会社のケース

商社の経理部/CFO組織

ここからは私自身が複数選考を受け、1次面接~最終面接を突破し、業務内容詳細を深堀るフォロー面談を経たうえでの合理的な推察になります。
一部実態と合わない可能性もありますが、大きな乖離はないと思います。

商社経理部については総合/専門ともに、中途採用については監査法人出身者の公認会計士や税理士法人出身の税理士が多いです。
グローバルにビジネス展開しているため、英語スキルも一定要求されており、その点でUSCPAもメイン採用ターゲットとなっているようです。

経理部には基本的には事業部決算チームと、連結決算チーム、税務チーム、企画チーム等があり、財務部には事業投資チームやM&Aチームなどファイナンス戦略を扱う部門があります。

監査法人で監査経験のある会計士であれば決算チームにおいて決算業務対応や監査対応、内部統制対応を、税理士であれば税務チームにて移転価格税制対応や税務調査対応を、コンサルティングファーム(会計系)出身者であれば、企画チームにおいてBPR推進や会計システム推進、BPOベンダー管理等を行うことがマジョリティだと思います。
事業会社経理部出身者であれば、その経験に応じて配属されます。

USCPAは評価されやすい

事業会社の経理部にはプロパー社員が大半であることが多いですが、会計士や税理士などの有資格者は少ないです。
そういったプロフェッショナル人材は外部採用が基本であり、ジョブローテーションが基本の日系企業経理部においてそうした資格を取得するインセンティブが働かないからだと想定します。

そのためUSCPAをはじめとした会計系の高度資格は、転職時に評価されるため、例え経理業務が未経験だったとしても、会計リテラシーが身についているというポテンシャル採用される可能性は高いです。

ただ、やはりそれだけでは採用決定にならず、プロパー社員とうまく協調できるコミュニケーション能力だったり、社風と雰囲気の一致度だったり、違和感のない学歴や社歴があるかどうか、ということは意外と重要です。

自分が受けた商社だけかもしれませんが、具体的な業務実績よりも、資格や社歴や学歴といった肩書きと人物面が重視されていそうな感覚でした。
採用理由がわかりやすいこと(上司に報告しやすいかどうか)と、自分と一緒に働きたいかの2面で評価をされると思います。





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