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【美術ブックリスト】『ゴッホのプロヴァンス便り 手紙とスケッチで出会う、あたらしいゴッホ』 マーティン・ベイリー著、岡本由香子訳

ゴッホが南フランス滞在中に残した260通の手紙の約半数を収録しつつ、それとは別に解説が付されていく。
制作中の作品について、色について、構図についてなど、いま目にすることのできる作品が出来上がるまでの過程が分かるものや、画家の仕事について、病院など生活についてなど、「ゴッホ自身が語るゴッホ」を読むことができる。ほとんどは弟のテオに当てたものだが、その妻ヨーや、ゴーギャンに綴った手紙もある。
著者はアートニュースペーパーの記者で、ゴッホ研究の第一人者とのこと。
図版多数。巻末にゴッホの足跡に準じたトラベルガイドあり。
ゴッホ生誕170周年を記念したもので、日本では兵庫県立美術館「ゴッホ・アライブ」に合わせての出版。
ここまでが概要。

ここからが感想。
ゴッホの手紙はすでにすべて書籍になっていて、日本でも翻訳されているけども、本書はそのエッセンスを絞り出してゴッホの芸術への入門書としても読める。書簡集でもあり絵本でもある。あるいはゴッホという一人の画家の人生に寄り添う旅へのガイドブックいった方がいいかもしれない。
解説、完成作品、スケッチ、手紙、註の配置のバランスがよく、読者を飽きさせない上手な編集だと思う。
ゴッホ好きの人はもちろんだが、これからゴッホを知りたい人には、伝記や評論文を読むよりよほど面白いだろう。解説の訳文は簡潔で読み易い。

160ページ B5判ヨコ変型 2980円+税 マール社

【目次】
はじめに/フィンセント・ファン・ゴッホの生涯/人物紹介
●アルル 到着/黄色い家/海へ/収穫/ひまわり/ホーム/ゴーガン/危機/再発
●サン=レミ=ド=プロヴァンス 精神科病院/絶望
●追伸:オーヴェル=シュル=オワーズ
フィンセント・ファン・ゴッホの足跡:トラベルガイド/フィンセント・ファン・ゴッホについてさらに知りたい方にお薦めの本/転載許諾および作品所在地

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