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【美術・アート系のブックリスト】 徳光健治著『知識ゼロからはじめる 現代アート投資の教科書』

 主に絵画など美術品のオンライン販売サイト「タグボート」の代表が著者。現代アートの購入指南本だが、個々の銘柄(作家や作品)に言及することはほとんどありません。美術品投資が不動産や株とどう違うかという一般論が展開されていきます。

 将来性のあるアーティストを見極めるには情報が必要、しかし自分が面白いと思えるかが重要といった心構えから始まり、プライマリーとセカンダリーといった市場の違い、日本と海外の市場規模や投資意識の違い、オンラインギャラリーの利用方法などです。

 主張をざっくりまとめると、美術品コレクションは金持ちの道楽ではなく、少し余裕のある30歳から40歳の若い層が参入しても楽しめる知的な趣味を兼ね備えた投資対象なので、まずはオンラインギャラリーを利用するところ初めてみるといいですよ、という話。

 最後にこれからの美術は評論家が認めるようなコンセプト重視のアカデミックな作品ではなく、大衆に支持されるものに変わるだろうと未来を予想しています。レストランがミシュランという専門家の格付けで評価されるのではなく、ぐるなびのような素人の口コミの集積による人気ランキングになるのと同じイメージをもっているようです。つまり、これからのアート投資はこれまでのように美術史や哲学を勉強しなくても、見た目の分かりやすさで選んで買えばいいということでしょう。

 成功例を誇大に取り上げることはありませんし、美術品を買うことで心が満たされるという精神論でもありません。美術品投資は短期の投機には向かないとか、すぐに換金できないなど、リスクやマイナス面を語っていることも評価できます。それだけに、何か美術品投資にはこんないいことがあるという情熱を掻き立てるエピソードがあればより多くの人が参入してくれるのではないかと思いました。

イースト・プレス 1500円+税  四六判 224ページ

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【目次】
1時限目:アート鑑賞を投資に変える
2時限目:アート流通の基本構造を理解する
3時限目:世界と日本のアートマーケットを理解する
4時限目:ネットを駆使してアートを買う
5時限目:アートの未来を想像する

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