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【美術ブックリスト】『26歳会社員、絵画を買ってみた』銀座ギャラリーズ監修、もなか イラスト

監修の銀座ギャラリーズは、銀座の画廊数十軒が集まって結成された任意団体。気軽に画廊に来てもらうことを目的に、5月には夜9時まで開廊する「画廊の夜会」、12月には「Xmasアートフェスタ」といったイベントを催している。

本書は、画廊に一度も入ったことないまったくのビギナーが、友人に誘われて画廊に足を踏み入れ、美術品の楽しみ方を覚えていくというストーリーの漫画と、解説文からなる。画廊スタッフやオーナー、店に出入りするコレクターとの交流を通して、それまで距離を感じていた画廊や美術品への認識があらたまっていく過程が、ひとつひとつ丁寧に描かれている。

「入場料はかからないの?」「買わずに出てきてもいいの?」といった素朴かつ誰もが思う疑問に答えながら、作品に込めた作家の気持ちや作家を育てようとする画商の思いまでも知ることになる。

巻末に「Q&A」コーナー、画廊案内、画廊のイチオシ作家、画廊オーナーによる「あとがき」が添えられている。
ここまでが概要。

ここからが感想。
銀座の画廊についての指南書はこれまでもあったが、ここまでビギナー向けに特化したものは初めてだと思う。ここに登場する画商さんも、銀座ギャラリーズの事務局スタッフも旧知の方々なので、正直なところ「義理」で読み始めたのだが、実際に読んでみると実に分かりやすく、いい本だった。

美術を生み出す作家、それを商う美術品商、購入して楽しむコレクターが、実際の姿にとても近く描かれている。世間で思われているほど美術の世界はお高くとまっているわけでもないし、画商も高く売りつけようともしていない。美術を楽しんでもらおうと純粋な気持ちで従事している人がほとんどだ。それが伝わる。

こうしたことは、鑑賞者やコレクションビギナーだけでなく、実は駆け出しの画家も知らない場合が多い。特に美大生にとって画廊は、将来の自分の職場になるかもしれないにもかかわらず、実際に行ったことがなかったりする。画廊を知るには、単に行けばいいだけなのだけど、それすらしないのならば、せめてこの本を読んだ方がいい。

今年は5月26日に「画廊の夜会」が銀座ギャラリーズの企画で開催される。各画廊にこの本が平積みにされるだろうから、そこで買ってもいいと思った次第。

160ページ A5判 1600円+税 WAVE出版

目次

プロローグ
第1章 画廊に行ってみよう
画廊のこと、もっと知りたい
画廊でのマナーを知ろう
画廊ではどんなものを扱っているの?
画廊と美術館って何が違うの?
画廊に入ったら買わなきゃダメ?
画廊と作家さんについて知ろう
豆知識1 画廊の種類
豆知識2 画廊名あれこれ

第2章 アートのある生活を楽しむ
気になる画廊や展覧会を探してみよう
いろいろな画廊に行ってみよう
気になることを作家さんに聞いてみよう
作品について考えてみよう
現代作家に注目してみよう
他の鑑賞者と交流してみよう
豆知識3 絵画のサイズ
豆知識4 額縁の存在

第3章 作品を購入してみよう
心惹かれる作品との出会い
気に入った作品を手に入れたいなら
購入について画廊に相談してみよう
購入の基本的な流れを知ろう
作品の飾り方や保管方法を学ぼう
お気に入りの作品と暮らす楽しみ
将来のことも見据えておこう
作家の思いと作品を受け継ぐために
豆知識5 アート市場
豆知識6 プライマリーとセカンダリーの話

第4章 もっと画廊や作品を楽しもう
Q&A
実際に行ってみよう
イチオシ現代作家
銀座ギャラリーズの画廊一覧

エピローグ
あとがき


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