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寒空の下 [中編小説]

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西山拓己は両親をはじめ、周囲の大人から過度に甘やかされて生きてきた。結果、特別な才能もないくせに、プライドだけは非常に高い人間に育ってしまった。彼は単位が足りず、大学を留年するこ…
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2022年2月の記事一覧

連載小説|寒空の下(7)

 無事に研修も終わり、俺は警備員として初めての現場へ向かっていた。久しぶりに早起きをした…

諸星颯太
2年前
4

連載小説|寒空の下(6)

 翌日から俺はくだらない研修を受けさせられた。朝から晩まで事務所に閉じ込められ窒息しそう…

諸星颯太
2年前
4

連載小説|寒空の下(5)

 母親と電話をしてから5日後くらいには伸弘とまた同じ喫茶店にいた。座席も前と同じところだ…

諸星颯太
2年前
7

連載小説|寒空の下(4)

 回数は少ないけれど、アルバイト経験がないわけでもなかった。特に覚えているのは初めてアル…

諸星颯太
2年前
6

連載小説|寒空の下(3)

 伸弘は俺が1人暮らしをしているアパートまでついてきた。意地でも親に連絡をさせるつもりら…

諸星颯太
2年前
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連載小説|寒空の下(2)

 近所の喫茶店には大学では数少ない友達の伸弘が来ていた。俺は入口でレインコートを脱いだ。…

諸星颯太
2年前
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連載小説|寒空の下(1)

 冷たい冬の雨が降っていた2月のある日、俺は大学の単位を取り損ねたことを知った。嫌な予感はしていたが、テストの出来具合があまりにも悪かったらしい。大学生活最後の学期にもかかわらず、卒業するのに必要な単位分しか授業を履修していなかった。3月に卒業する予定が、あと半年ほど延期になった。もしもの時のため、多めに授業を取っておけばよかったのだが、それは自分の流儀に反していた。  周りのほとんどの学生のように4月から働く先が決まっていたわけではなかったけれど、卒業したらすぐに放浪の旅