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仕事という病
「お疲れ様でした」
パソコンの電源を落とし、職場に残る同僚に声をかけて先に職場を後にしました。
リュックを背負い、勝手口のロックを解除して外に出て。鉛色の空を見上げると、ポツポツと降る雨。
久しぶりに、空の色がきちんと見える時間に帰ることができたのに、なぜか心が晴れないのです。
パソコンの電源を切る前ぐらいから、本当に今日、帰っても大丈夫なのか? という思いがとり付いて、なんだかスッキリ帰ろうという気持ちがわかず……。
ここ最近、真っ暗になる時間まで帰ることができなかったためでしょうか。
早く帰ることはうれしいことのはずなのに、まだ何かやることが残っているのではないか、見落としがあるのではないか……そういう思いが後ろ髪を引いてしまうのです。
今年度、異動に昇進と、仕事で劇的な変化が一気にふたつありました。
初めての仕事に、初めての部下とともに仕事に臨むという、わからないこと尽くし。
ようは、自分が何の仕事をしているのか、まったくわからないままに走り続けなければならないということです。
全てやりきったつもりでも、見落としがあったり、知らない過去の実績を報告したり……気付いていないことがあるのではないか、という疑念は常につきまとって離れないのです。
どこまでやっても安心できず、常に頭から離れない感覚は、まるで、タチの悪い病気にやられているかのよう。
明るい時間に帰るのは、そんな病の治療薬になるのかもしれません。
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