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HOLGA DIGITAL・分析編(北加賀屋スナップ作例あり)

 近所じゃないリサイクルショップに遊びにいってみたら、ジャンク箱にHOLGA DIGITALが転がってたんですよ。

 まあHOLGAといえば好きな人は好きなやつですが、流石にブームも去って、フィルムの方ならだいぶ安売りされてるのも見かけます。流石に120フィルムのランニングコストは私には辛いから手が出ませんが。
 それがDIGITAL。ふむ。

 正直トイカメラ文化に触れてきたわけでもないので、捨て値だったから一応拾ってみた感じだったんですが、スペック調べようと思って検索したらびっくりするような中古価格が表示されて。掘り出し物だったかな。

スペック研究

 おもちゃデジカメの類ではあるんですが、独特の文化を築いたカメラだけに、独特の仕様になってますね。

 まず電源スイッチがダイヤルで、OFF-135-120と3点になってる。
 135にすると、4:3のアスペクト比で撮影。120にすると1:1になる。
 135は3:2だし、HOLGAは110フィルム版もあったんだから、4:3は110にすべきじゃないかなーと思いますが。

 光学ファインダーがありますが、ただの素通し。視野率は……これ50%くらいしかないような? また、見えてる視野は1:1ですね。
 でもって、液晶モニターもついてない。液晶ファインダーも、再生すらできない。どんな写りになったかは、あとでPCで確認。

 レンズ底部のスイッチでカラーと白黒を切り替えられる、というのも面白い。カラーで撮って後でモノクロに、というのは野暮でしょう。
 レンズ右側のレバーがシャッターです。

 メディアはSDカード。16GBまでいける、WiFi内蔵カードも使える、とのことです。例示されてるのが東芝FlashAirなんで、他のじゃダメかも。
 手元のPanasonic製4GBは認識しなかったな。Lexarの古い2GBが使えてるんですが、相性が厳しいのかも。

 電源は単三電池2本。センサーとメモリーカード読み書きくらいしか電気使わないカメラなんで、古いニッケル水素電池とかでも平気で動きます。

レンズについて

 レンズは、Exifが本当であれば7.45mmのようです。
 センサーは1/3.2型なんで、ライカ判に換算して57mmくらい。撮った感じもそれくらいと思います。
 オリジナルのHOLGA120Sは60mmのレンズで、6x4.5判だからライカ判換算37mmくらいの準広角。135フィルム判のHOLGA 35MFも38mmなんで、それくらいが伝統的なHOLGAの画角らしいんですが。さて。
 110フィルム判のHolga Micro 110は、25mmレンズだからライカ判換算50mmくらいでした。Holga Digitalはこっちに近いとはいえるかな。
(60mmくらいで作ってください、とOEM先に注文しちゃった気がするんだけど言わないでおこう。書きますけど)

 ピントは固定で、1.5mから無限遠のパンフォーカス。
 多分2mがピント位置かな。(f=7.45mm・F2.8・許容錯乱円0.03mmでピント位置2mだと1.5m~∞です)

135モード(4:3)のケラレ

 HOLGAのお約束というか、ちょっとイメージサークルが足りない感じのケラレ。
 しかし、120のホルガだと周辺光量がだんだん落ちていく感じみたいですが、DIGITALだといきなりスパっとケラれてる感じに見えちゃう。

120モード(1:1)

 そして1:1になる120モードにしてみると、ケラレてる部分がトリミングされちゃって。周辺光量も落ちてない。
 マトモに写ってるといえばそうなんですが、このカメラでマトモに写ってどうすんのっていう気もしちゃうな……。

露出の謎

 露出周りで面白いなと思ったのは、絞りを開放F2.8またはF8で、スライドスイッチで選べるようになってます。自称。
 ですが、あれー……? 絞り板などをレンズに差し込んでいるとすれば、レンズを覗けば見えるかなと思ったんですが、どうやっても見えない。まあ小さすぎて見えない可能性もありますが、うーん?

 なぜか、F8設定で撮影するとExifのExposureBiasValueに-1が書き込まれるようです。F2.8設定なら0です。
 Exifはずさんな使い方をされていて、FNumberはF2.8とF8が法則不明に変動しています。スイッチと連動はしていない。

 しかも、シャッタースピードは単速の1/60秒だとか。えー……?
 写ルンですとか、ネガフィルムを使うカメラでシャッター単速はあるんですけど、あれはネガの露出許容範囲が広いことを当てにしたもので、デジタルでは苦しいはずだけども。
 それに単速でも1/60秒は長すぎる。露出オーバーに強いネガを使う写ルンですでも1/140秒。露出にシビアなデジタルで1/60秒は無理だ。

 晴天の屋外がEV14ほどとして、適正露出はF16・1/60秒・ISO100とか、F8・1/250秒・ISO100くらい。
 絞りF8で1/60秒となると、ISO100なら2段オーバーなので、さすがに写真として成立させるのは厳しい。

 公称値の「F2.8/F8選択式・シャッター速度1/60秒固定」と、Exifに書かれている感度ISO100を信用するとすると、昼間に撮ったらF8設定でも2段オーバーで酷い写りになっちゃうはず。

左:F2.8設定 Exif:F8 1/5696.8s ISO100
右:F8設定 Exif: F2.8 1/10849.3s ISO100

 しかし普通に写ってますね。
 Exifが怪しいのでシャッタースピードが本当の値かはわかりませんが、F8にすると-1EVの露出補正がかかり、露光時間が半分になってる。
 絞りなんか設定と逆になってますしね。ほんとにExifが謎。

 これ、絞りF2.8とF8の切り替えなんかやってないな。常時F2.8で撮ってますよ。F8にすると-1EVの露出補正。
 そしてシャッター速度も1/60秒固定でもなく、自動的に変化してAEになってます。そうでないとまともに写らないはず。

 ということで、露出周りは公称スペックと全然違い、「F2.8固定のAEカメラ、-1EVの露出補正スイッチが付き」というのが実態ですね。うん。

全画面白飛びです
昼間にバルブになるように操作した結果。

 また、シャッターを長押しするとバルブ撮影してくれると。
 試しに昼間から外でシャッターを長押ししてみると、真っ白になりました。確かになんかバルブ的に動作してるらしい。使うところあるかな……。

ホットシューでストロボ夜景作例

 ホットシューを備えたカメラなんで、外部ストロボが使えます。
 手元にGN20固定光量のがあったんで取り付け。バランス悪いなあ。

 ストロボを使うと、このカメラ、シャッター切ってから実際に撮影されるまでのラグがめちゃくちゃ大きいのがわかりますね。
 シャッターを押すと、1秒近く待ってからファインダー内で赤いLEDが点灯します。それが消えてから、ちょっとだけ置いてストロボが光ります。
 びっくりするほど遅い上に、LED点灯が露光中の印ではなく、実際の露光は消えた後です。
 なんか手ブレが酷いカメラだな、と思ったら、撮れてると思ってカメラ下ろした当たりで露光されてるんです。シャッター切って、LEDが光ってからさらに2秒くらい構えたまま動かないのが吉。

 カメラ下ろすのが早いとこうなります。ローリングシャッター効果もだいぶ起こるのがわかりますね。

 で、ストロボ作例。
 試写した時点では、F8に設定すればちゃんとF8になると思っちゃってたんですよね。F8・ISO100でGN20だったら、2.5mくらいが適正露出になるから、わりと使いやすいかなって。

135モード・F8設定・カラー・ストロボGN20

 立ってる状態からヒルザキツキミソウの群生を撮ってこの大オーバー。3mくらいの距離だけど全然だなあ。
 はい、実際はF2.8でしたもんね。だったら適正露出になる距離は7mくらいだ。

135モード・F2.8設定・カラー・ストロボGN20

 7~10mくらいならいい感じの露出かな。

135モード・F2.8設定・カラー・ストロボGN20

 街灯とのミックスが決まる場合もありました。

135モード・F8設定・カラー・ストロボGN20

 ファインダー小さくって水平取りづらい。

 しかし絞りも感度も変わらないカメラとなると、固定光量ストロボだと定距離でしか使えないな。光量調整できるストロボのほうがいいですね。

昼間の作例 at 北加賀屋

135モード・F2.8設定・カラー

 昼間も撮ってみましょ。
 もうちょっとなだらかに周辺光量が落ちてほしいとは思いつつ、安直に日の丸で撮るとトンネル効果がわかりやすい。

120モード・F8設定・カラー

 120の正方形だと、隅のケラレがトリミングされちゃう。
 F8に設定してやると-1EVの露出補正になる、ということで、木陰なんか撮 る時に使えますね。ただ、露出の割に妙に白っぽく被って見えますが、多分レンズフレアが出てるんでしょう。

120モード・F2.8設定・カラー

 オブジェを真ん中にいれたつもりだけどズレ。ファインダーのパララックスは近距離だとすごく大きいんだけど、遠距離でもけっこう出てるような……。というかパララックス以前に視野率低すぎて。

135モード・F2.8設定・カラー

 ホワイトバランスは案外暴れない。多少ゆらぎはするのでちゃんとしたカメラには及ばないんですが、ちゃんと写ってる範疇でした。
 色もなかなかいい出方では。

135モード・F8設定・カラー

 木陰だからF8設定して-1EV露出補正してみたんですが、AEがかなり暗さに引っ張られてオーバーで、-1EVじゃ足りてないな。木漏れ日が当たってるところはぶっ飛んじゃった。

135モード・F2.8設定・カラー
135モード・F2.8設定・カラー
135モード・F2.8設定・カラー

 北加賀屋の古い長屋を改装してアートスポットになってる千鳥文化
 入ってみようかと思ったけど、ちょっとおっさん一人じゃ場違いそうで遠慮しちゃった。

135モード・F2.8設定・カラー

 この看板いいなあ。

135モード・F8設定・カラー

 私にゃ加賀屋はアートより商店街のほうが馴染める。
 こういうところではF8設定でマイナス露出補正しましょ。

135モード・F8設定・カラー

 ローリングシャッターのせいだと思うんですが、画面右上はブレてないのに左下はブレてるような絵になることがあります。
 レリーズタイムラグが長いのはわかってるから、シャッター切って露光が終わったと思ってもさらに1秒は待つようにしてたんですが、それでもやっちゃうな。

135モード・F8設定・カラー

 F8設定の-1EV補正は、使いこなしのキーになりそう。

120モード・F8・モノクロ

 これは正方形で-1EVでモノクロだ、と直感したのはなかなか鋭かった。


まとめ

 以前からあるホルガという文化をデジタルで再現しようという意図と、その為に盛り込んだ仕様なのがわかるので、こう作ろうとして作ったモノなのはわかります。
 ただどうにも、公称スペックや仕様が全然実態と違いますね……。まあ別に誰も文句言わないとは思いますけれど。
 というか、一般的にこのカメラはこんな、理屈っぽくスペックを把握して使おうとするものじゃなく、撮って写ったなりに出すようなもんですね。
 私は理屈がわかってないと落ち着かないんで、こうしないでいられないんですけれど。

 で、写りが意外とマトモで、意図的に付けた特徴であるケラレを120モードでカットしちゃうと、一昔前のスマホカメラ程度はよく写ってる感じがします。ガラケー時代より良いくらいじゃないかな。
 といっても、公表されてる仕様が間違いだらけだと分析した上で、正しく写るモードを適当に選んで撮ったらちゃんと写った、というような話でして、仕様を信じたら変に写るでしょうね。いや、なんやそれ……。

 それからストロボ使うのは面白いと思うんですけど、絞りF2.8を変更できないとなると、GN10くらいの超小型ストロボがほしいですね。
 HOLGA印でGN12のストロボがあったんですが、もう売り切れ。ヒカル小町10iとかならちょうどいいかな。
 マニュアル調光ができるのは大抵大型なんですが、フラッシュQ Q20IIなんて小型で多機能、別にHOLGA DIGITAL用でなくても面白そう。


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