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「そこ」は広角、「それ」は望遠

 長居植物園で愛用の一眼レフで花を撮っておりましたら、iPhoneで撮ってた奥さんが話しかけてきました。
 曰く、「写真を撮っても、なんだか見た感じと違うんだけど、なにか撮り方とかあるの?」と。

 どう違うと感じるのかと聞いてみても、違和感を言葉にしづらいみたい。
 となると多分、iPhoneのカメラが広角レンズ(広い範囲が写るもの)だから、パースがついてしまって形が歪んで写る、というのが気になるのかと見ました。パースなんて、普通の人が言葉で説明できるわけがないでしょうし。

 そういうわけで、「望遠にズームして、少し離れて撮るといいですよ」とお伝えしたところ、どうやら期待していた絵が得られたみたいで、喜んでもらえました。

広角レンズは難しいっていいますよね

 スマホのカメラって広角レンズが当たり前ですが、昔からカメラやる人は「広角は難しい」っていいます。
 iPhoneはどれもライカ判換算28mm。スマホのカメラでは当たり前に使われるありふれた広角レンズではありますが、十分難しい。

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 広角レンズで、大きな建物を下から見上げるように写したりすると、こんなふうに形がゆがむ。こういうのを「パースがつく」とかいいます。遠近感が強調されちゃってるんですね。
 単に画面いっぱいに建物を収めただけのつもりが、「明らかに目で見てるのと違う」という写真になっちゃう。
(この写真は狙ってこう撮ったので、ある程度格好良く撮れてるように見えるかと思いますが)

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 花とかを撮るにしても、広角では難しい。これは植物園で適当にスマホでバラを撮ったやつ(ASUS Zenfone Zoomの28mm)。
 やっぱり、手前のバラはなんだか歪みますね。
 また、余計なものがどうしても画面に入っちゃって、うるさい写真になっちゃう。肉眼以上に広範囲が写り込むから、これも「目で見たのと違う」と思う一因でもあるでしょう。

 単に旅行先で集合写真を撮るとか、あるいは見かけたものをメモ的に記録するとかなら、広角レンズは便利ではあります。撮りたいものを画面内に入れることが簡単になりますし。
 しかし、格好いい写真を撮ろうとすると、どうにも難しい。

 一見使いやすそうだけど、ちゃんと使いこなすのは難しい広角レンズのカメラが、特に説明なくほとんどすべての製品に搭載されちゃってる、というのが今のスマホカメラかもしれませんね。

広角・望遠はどう使い分けるか

 最近のスマホは、カメラを複数搭載しちゃって、広角と望遠を使い分けられるものも増えました。
 デュアルカメラのiPhoneに搭載されているものだと、28mmの広角レンズと、57mmの望遠レンズだそうです。ズームでいえば2倍くらいですね。
 カメラがひとつのスマホでも、デジタルズームができます。デジタルズームは画質が悪くなりますが、2倍ズームくらいなら大丈夫でしょう。

 スマホのカメラで、そのままの広角と、2倍にズームした状態の望遠とを使い分けるとしてみましょう。
 理屈を並べれば色々ありますけど、思いっきりざっくりいえば、「その場所(そこ)を写すなら広角」「何かひとつ(それ)を写すなら望遠」と使い分ければよろしいかと思います。

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 これは宇都宮城の写真です。
 L字に折れた土塁があって、その上に城壁が続いていて、その先に櫓が建っている。遠くに宇都宮の町並みも見え、天気もよかった。
 そこがどういう場所か、という情報が画面にたくさん含まれます。旅行写真とかならこういうのがいいですよね。

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 で、上の写真から2倍望遠になるように、櫓のところを切り出したものです。撮影時点で2倍望遠にして撮っても同じように写ります。

 余分な情報が減って、櫓が主役の写真だと明確になります。
 また、櫓の形にも歪みが少ない。遠くから望遠で写すと、本来の形で写ります。もし広角レンズのまま櫓に近づいて写すと、パースがついて歪んだ写りになります。
 写る範囲についても、大体「櫓に注目して見てるときに見えてる範囲」くらいに思えるでしょう。(感覚的なところなので、人によってはそう見えないと思うかもですが)

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 なお、撮る対象が小さなものでも、広角で形がゆがむ現象は起こります。
 小さなものでも、人間くらいでも、大きな建築物でも、「広角レンズで画面いっぱいに収める」という写し方をすれば、形の歪みは出てきます。

 立っている人に、目の高さにカメラを構えて近づいて、広角レンズで画面いっぱいに写すと、頭がでかく写ります。撮影者がしゃがんで低い位置から写すと、今度は巨人みたいに写ります。これも広角レンズの歪みのせいです。
 人を撮るのも、望遠にしてちょっと離れて撮影すれば、違和感ない姿に写ります。

 「そこ」は広角で、「それ」は望遠で、というのは、これで伝わるでしょうか。

余談:望遠は遠くのものを大きく写せるのか?

 望遠というと、「遠くのものを引き寄せて大きく写す」というものだと思われがちです。
 たしかにそういう効果もありますが、スマホの例で挙げた2倍程度の望遠では、あまり引き寄せ効果はありません。

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 例えば、動物園の猛獣類は、柵から大きく安全地帯をとってあるので、距離が数メートル離されてしまいます。そういうところだと、2倍や3倍程度の望遠ではなかなか届かない。
 このカットは、iPhoneの28mmと比べれば10倍強の望遠になるレンズをつけて、一眼レフで撮ったものです。

 「遠くを撮影する」という目的がはっきりある場合は、スマホじゃなく、望遠ズームレンズがついたカメラを持ち出すしかないですね。
 まあ、そろそろ10倍くらいの望遠がついたスマホが登場しつつありますから、スマホでもこれくらいの写真が撮れて当たり前になる時代も遠くないのかもしれませんが。

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