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勉強とか、仕事とか、青春も。

桜の舞う季節となった。街はようやく、4月の始めの忙しさが少し落ち着きを取り戻す方へ動いている所だった。さくらは社会人2年目となった。大学を卒業したものの、特に就職には至らず、バイト(軽作業)をフルタイムでこなして生計を立てている生活であった。特に代わり映えのしない、倉庫でピッキングという仕事をしている彼女だが、そんな中素敵な出来事がこれから起こる。
 東京の空は実に狭いと、思う。生まれ故郷の埼玉はもっと空が広くて、青々としていた。東京に越してからすぐにこちらは雨や曇りになるから、気分もどんよりとしてしまう。まあ、でも東京は好きだ。ビル群とか見ていると、とっても落ち着くのが常であった。
家を出て、彼女はいつものバイト先の倉庫に向かっていた。自転車をこいでいると、同じバイト先の誠に出会ったので軽く挨拶をした。
「おはよう。今日もよろしくね。」
すると、
「おはようございます。今日もお願いします。調子はいかがですか。」
と彼が返事をしてくれた。誠はさくらよりも年下なので、かしこまっている。さくらは、
「そうだね。今日はまあまあ元気だよ。一緒にバイトに行かない?」
と聞いてみた。彼は是非ともといった感じに、
「では、行きましょう。さくらさんと行けるなんて僕は幸せです。」
と言った。こうして、2人は歩き出した。さくらは、自転車を押して進むことにした。
倉庫までは歩きで30分ほどの道のりだ。2人とも早めにバイト先に着くように家を出ているのでのんびり歩いていても大丈夫であった。
途中、桜並木の道があったので、そこを通ることに。坂があって上から東京の海が広々と見える、いいスポットだったからだ。
桜の並木道に到着。今日の並木道は風がそこそこに吹いていたために、桜の花びらが宙を舞っているという壮観な風景で、2人は思わず立ち止まってしまった。
「すごい。桜が綺麗だね。」
と、さくらは呟き誠が、
「そうですね。花びらが宙を舞っていて素敵です。いいですよね。」
としみじみ言った。
2人はもっと見ていたいと思ったが、バイトの時間が迫ってくるので後にしなければと足を進め始めた。桜の並木道を抜けると、緑色のコンビニが見えてきた。バイトの始まる時間には間に合いそうなので、店に寄って行った。
テレテレテレー テレテレテレ。
そんな音楽とともにドアは開き、2人はコンビニに吸い込まれた。
緑のコンビニからいくばくかして、オレンジの袋を下げた二人が出てきた。どうやらお茶とお昼の弁当を買った様だった。2人はその後寄り道もせず、倉庫に行ってしまった。


 そしてバイトが終わったころの時間。倉庫から人々があふれ出し、その中にさくらと誠の2人の姿も見えた。2人は少し疲れているみたいだったが、仕事を終えたという充実感や達成感に満ちた顔をしていた。その後、2人は駅で別れ、1人は駅の方向へ、もう1人は専門学校へとそれぞれの目的の場所に向かっていたのであった。




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