ボクちゃん
ボクちゃん 1
僕の名前は佐々木次郎という、以下佐々木と記すことにする。
四月一日、僕は、とある片田舎の教育委員会で辞令を受け取った。
小さな町役場の二階の片隅の一室である。
男女五、六人の新任教師が立ち並び、教育長から指導助言を与えられた。
新任教師達は何か気が張りつめたような緊張感のある趣て聞き入っていた。
僕も含めてである。
やはり全員正装である。
男子教師達は背広でネクタイをしめている。
流行の濃紺のスーツ姿である。
女子教師達もセンスのある正装で面している。
部屋の上段には教育長をはじめ、教育関係の人が構えている。
男女新任教師達全員が深々と頭を下げ、室内は何とも言い様のない気配が、流れ出ていた。
少し圧迫されたような雰囲気も感じられ、室内は緊迫した空気も流れていた。
僕もそうだったが、他の教師も一抹の不安を抱いているような姿だった。
教育長の顔を見れば、教育者としての風格が備わっていて、その顔、姿、その言葉には、認める内容がふんだんに付着していた。
そして儀礼的な挨拶を交わし、室内を出て、町役場の廊下を歩いた。
この町役場独特の気配が感じられた。
何となく薄暗くて、雰囲気にも何処か馴染めないようなところがあった。
少し変な気持ちを持ちながら、何気なく外へ足を踏み出した。
僕ちゃん 2
町は如何にも小さな田舎町である。
その風情もあまり親近感を持つことができなかった。
町の風景にも少しの違和感を覚えた。
取り敢えず腹ごしらえをしようと思った。
町の中央にある並木道を急ぎ足で駆け抜けた。
そして街角にある小さな食堂の暖簾をくぐった。
そして盛り合わせを注文した。
実は僕の一番好きな食べ物が盛り合わせだった。
店の主人は一種独特で、不吉兆な面構えをしていた。
初対面であるのに僕に対してまるで小坊主を顎であしらうかのような仕草で盛り合わせの料理を持ってきた。
一見よそ者扱いをしているよいな横柄な態度で接してきた。
そして「お宅は何処から来たんだ」「どんな仕事をしてるんだ」と根掘り葉掘り、根も葉もないことを聞いてきた。
少し睨み付けるような眼をして、僕を尋問にかけるように問いかけてきた。
僕としては、「関係ない」と思うような事はかり聞いてくる。
少し腹立ちを覚えたが、着任そうそうこの店の主人を相手に喧嘩をするわけにはいかなかった。
本来ならば、この辺でイチャモンがつき、一悶着が起こって、何か騒ぎが起こりそうなところである。
少しイザコザが起こって喧嘩がはじまっても不思議ではない。
ところが僕の場合はそうではなかった。
空腹と仕事のため余裕がなかった。またまともに相手にする気はなかった。
そんな心境で昼食をとったので、味のほうは全くわからなかった。
うまくもなく、不味くもなく、何とも言い様のない味だった。
後で聞けば、この店は、この田舎町では、かなり名のとおった老舗とのことだった。とにかく、食事を早く済まそうと思った。頭を切り替えて、肩を透かせて店を出た。
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