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空色の蓋然性

 空は本当に青いのだろうか。僕を含め当然、空は青いと多くの人間が主張する。しかし、皆が青色だと思っている色は、僕が青色だと思っている色と全く同じ出るのだろうか。首を縦に振りきる自信は到底ない。みんなに僕の見ている空の色を教えたい。いや、知ってほしいのだ。空を飲み込めたらどれだけ美味しいのだろう。常にさわやかでのど越しのよさそうな色をしている。時に、羊の毛のような形をした雑味が混ざることもあるが、それでも爽快な色をしている。何度も見たくなる色だ。僕のパレットの上では到底作り出す

    • 四面書架⑦ 自由の刑に処サルトル      大学編②  罪と罰

       鴨川で皆と黄昏れ人生観を語りあった日々は楽しかった。しかし同時に悲しくもあった。みな高校生活を誇りに思っていたのだから。初対面の方々に自分の高校生活を赤裸々に打ち明けることは到底できなかった。そのため、必死になって嘘をついた。自分を嘘で守りたかった。嘘を重ねると本当の自分が何なのか分からなくなってくる。そして罪悪感ゆえに、激しい自己嫌悪に陥り、自暴自棄になった。罪悪感を感じていた時はまだましであった。とうとう、そのような感情さえも持たなくなったのだ。周りの人間も信頼できなく

      • 四面書架⑥ 街灯日和

         公園の砂場によりてサンダルをぬいだ  永久に何だか懐かしい想いをした  思い出というものは薬でもあり毒でもある  いっそうのこと、思い出すべてを手放したくなる     幼い時に見上げた夜空はどれほど煌びやかだったのだろう  おぼえてないや  一匹の蝶が横顔を通り過ぎる  ふと彼に目をやる  彼は街灯めがけて一直進だ  そんな絵の具のような淡い灯をみると他にも多くの昆虫が集まっていた  彼らの名前を知る由はない  ただみな懸命となって灯に包み込まれようとしている  本能には

        • 四面書架⑤ パンとペンとピンをもってポンタ公園にいく

           カタカナの”ペ”が大好きだ。ペは面白い。こんな文字を生み出した平安人に感謝に念を送りたい。爆発力がありながらも、どこかからやさしさを感じる発音。このペ一文字が単語に入っているだけで、その単語に活力がわく。 ペンタゴン、ペリカン、ペンギン、ペットボトル。。。 どれも生き生きとしている。ペ↑でありぺ↓ではない。これから盛り上がってくる感じがして、とても大好きだ。

        空色の蓋然性

          四面書架④ 自由の刑に処サルトル     大学編①

           最後は悲惨な終わり方をした高校生活であったが、それも含めて楽しかったと今では言うことができる。虚勢ではない。確かに彼からも学んだことはある。それらは、頭が良いことは大事だが決して幸福に対して必要十分条件ではないこと、世の中にはかかわってはいけない人間がいること、人に病むことはそれなりに迷惑をかけるということだ。特に偏差値重視の思想に侵された僕にとっては、これからの人生を生きる上で善い糧となったと心から強く思っている。   雪国での長いような短いような学生生活はこうして一滴

          四面書架④ 自由の刑に処サルトル     大学編①

          四面書架③ 自由の刑に処サルトル   受験編 過去の栄光扁

           近所の小学校の治安が悪いことから母親の提言もあり、小学校受験をすることになった。暗記力が必要な入試であったために様々なものを暗記させられた覚えがある。この入試勉強で養った暗記力は一生の宝ものだと思っている。ダメ元の受験であったが、運よく受かることが出来た。そこでの小学校生活はとても楽しかった。みな自分にはない能力を持ち合わせており、日々才能の掛け算によって出される順風満帆の生活を送ることが出来た。小中学校が連携していたため、僕を含めある程度の人数(60人のうち50人くらい)

          四面書架③ 自由の刑に処サルトル   受験編 過去の栄光扁

          四面書架②  自由の刑に処サルトル        芸術扁

           僕は色々な天才にめぐまれている。そのなかでも、ゴロ合わせの天才がいる。これでもかというほどの下ネタを駆使し、30年たっても忘れないであろう渾身のゴロを提供してくれる彼であるが、唯一そのような語句を交えずとも、脳裏にこびりつくものがある。それは、哲学者サルトルが提唱する「人間は自由の刑に処されている。」という文言とサルトルを掛け合わせたものだ。そんなことはさておき、僕はまさに今自由にいじめられている。あまりにも多くの選択肢から適切な解を選び抜くことは難しすぎる。間違った方向へ

          四面書架②  自由の刑に処サルトル        芸術扁

          四面書架①   ぬいぐるみ

          午前3時44分、ベッド上でぬいぐるみが死んでいる。目に生気がない。今、あるはずもない心臓を懸命に揉んでいる。ふきかえせ、息を。息を。。。  実家から行き場のなくなったぬいぐるみが多く下宿先に送られてくる。中には久しぶりに会うものもいる。彼らには名前があったはずだが、そんなものは当然覚えていない。そのため、再度、一体一体に名前を与える。思いのほか、この作業は楽しい。目の前に存在し何かを訴えかけるような瞳をもつ物体を一言で表現できた瞬間は、名状しがたい快楽が全身をおそう。彼らも

          四面書架①   ぬいぐるみ