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#自分を救った「会話」

「もう少し、休んで準備するべきだ。」
復職できる自信があった私にとって、産業医から投げかけられた言葉はショックだった。もう十分復帰できる状態だと思っていたからだ。

2021年5月中旬、私は睡眠をとることができなくなっていた。
仕事で怒られたとか、悲しいことがあったわけではなく、突然だ。
一つ思い当たることと言えば、扁桃炎で発熱し、仕事を一週間休み、周りに迷惑をかけてしまったことくらい。だが、それに関して周りから何も言われていなかった。
課長から、「顔色が悪いね」「元気ないけど大丈夫?」と言われた。ただ、このご時世、ほとんどオンラインでのミーティングだったため、「そんなことないですよー」と軽く流していた。
睡眠がうまく取れず、生活リズムが崩れ始めて2週間が経ったころ、「長期で休んだほうがいい」と課長からの一言で、私は休職することになった。
とても恥ずかしかった。私以上に周りが頑張っている、残業している人が多いにもかかわらず、なぜ私だけ休んでしまうのか。きっと声をかけてくれている課長も、迷惑がっていると思っていた。

なぜここまで考えてしまったのかというと、今回の休職は2回目だったからだ。

一回目は社会人1年目のころ、上司からの厳しい指導に心が耐えられず、仕事のことを考えると涙が止まらなくなってしまい、"適応障害"と診断された。この時も、"周りの同期も同じような思いで働いているのに、なんで自分だけこんな風になってしまうんだろう"と思っていた。そのせいで、だれにも相談できなかった。私の会社には、年齢の近い先輩がメンターとなり、サポートしてくれる制度があり、1か月に1回、面談をすることになっているが、その制度もうまく使うことができず、悩みを打ち明けることができなかった。
会社にいけなくなった、と上司に言わなくてはならなくなったとき、はじめて自分が置かれている状況を人に話した。
上司からの最初の一言は「気づいてあげられなくてごめん」だった。
それは辛かったね、と。そこで改めて、みんなが同じようにつらい思いをしているのではないことが分かり、悩んでいたことがほぐれていくような気がした。
そこから私は約4か月ほど休職し、社会人2年目の3月、復帰することができた。もし自分の状況を話すことができなかったら、自分の悩みを解放することもできず、ずっと辛い思いを抱えていたのだと思う。

それから約1年経ったころ、前述のように睡眠障害に襲われた。
2回目の休職、上司にしか相談できなかった。同期にも、仲のいい先輩にも何も言わないまま、私は休職に入ったのだ。

2021年8月、休職から1か月、実家に戻っていた私はうまく睡眠もとれており、仕事への意欲も高まっている状態だったため、人事へ、復職したい旨話をしていた。
「産業医との面談で、復帰できるか決まるからね。とにかく、元気になってよかった。」人事はそう声をかけてくれて、すぐに産業医との面談をセッティングしてくれた。
産業医との面談が、復帰する条件になるのは1回目の休職で分かっていたため、ここでちゃんと寝られるようになったことを話せば大丈夫だと思っていた。

そこから冒頭に戻る。
私は復帰できる自信があったため、不思議と冷や汗が出た。
「焦らなくてもいいんです。休職の期間が1,2か月延びたって、会社には大きい影響はないし。人生60年以上生きていく中での1,2か月なんて、ほんの短い時間なのだから。しっかり準備期間にあてましょう。」
会社の人たちに迷惑をかけている、早く復帰しなくては、と考えて、焦っていることを見透かされている気持ちだった。
実際の私の状態は、睡眠はとれていたものの、活字がうまく頭に入らず、集中力が低下していたり、体力が著しく低下し、体調を頻繁に崩していた。
自分自身、焦っている気持ちが大きく、なぜ復帰させてくれないのだろうと、少しイライラしていたが、続けて産業医の先生は
「今復帰してやっぱり駄目だった。大丈夫と言っていたのに、実際は大丈夫じゃなかった。自己管理ができていない。という評価につながってしまう。ゆっくりでも確実に、戻していきましょう」と言ってくれた。

早く戻ることが評価につながるのではなく、しっかり戻る準備をし、休んだ分、ちゃんと働くことが評価につながると判断してくださったからこそのアドバイスだった。

もしこの産業医との会話がなければ、私は不十分な準備のまま復職し、3回目の休職に繋がっていたかもしれない。オンラインでの面談ではあったが、私の表情や発言をよく見てくださり、優しい言葉をかけてくださったのだと思う。そして、この会話がなければ、私自身、復帰への準備が不十分なことに気づかなかったと思う。

このご時世、対面で話す機会が少なくなり、自分が考えていること、自分の状況を話す機会を作ることが難しくなった。そのため、人と話しているうちに気づく「自分の置かれた状況」を認識することさえ難しくなった。
自分のことは自分が一番わかる、と私も思うが、人に気づかされることも多い。

今回の会話をきっかけに、オンラインでも人と話す機会を作ること、そこから生まれる会話が、自分を救ってくれると、改めて実感した。

#あの会話をきっかけに



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