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【随想】あれこれ考えつつも、まず書いてみようかな、と

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いのちなる 旅するなれば ひとの道 消ゆる知りても こころとは あとに残らむ ことだまの おさなきものの すなほなる 泣きていふやう ことのは響かむ
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記事一覧

【絵本】『もうじきたべられるぼく』を手にして

 「もうじきたべられるぼく」・・・  はじめてこのしょうげきのあるだいめいを目にしたのは、もうかなりまえ、しんぶんの下のほうにある本のこうこくのところでございました。  ちょっとした本のとりよせをたのんで、本やまでうけとりにいって、子どもむけの本のまえをとおったときに、ふとしたことで、どこかで見たことあるような本のだいめいに目がとまりました。  「もうじきたべられるぼく」・・・  たったひとことのだいめいが、ここまでしらないうちにあたまにこびりついたことなど、いままでござい

【随想】滅びゆくものにも美しいと感じるのか

 人は、緑深い山、緑明るい山を見て美しいと思う。澄んだ青い空を見ても紺碧の海を見ても美しいと思う。そうかと思えば、漆黒の宇宙に散らばる星を見上げても美しいと思う。  自然、動物、植物を問わず、生命の有無にかかわらず、人の手による建物、彫刻、絵画、音楽に至るまで美しいと思う。  美しいとは肯定的な意味(良いこと、心を豊かにすること)であるという認識でいたが、少し退廃的な意味を思わせる観点の異なったことを問われて考え始めたことがある。  「美が滅ぶとき、美しいと強く感じる

【歌詞】『さくら貝の歌』/あいまいな言葉

 『さくら貝の歌』の調べは、優しきに好みの曲なり。  されど、男の恋心、女の恋心につき語り合ひしとき思ひたるは、末(すゑ)の行に「果てぬ」とあるは腑に落ちぬものなりと。  死して後も慕はるるは嬉しきことなれど、「果つ」に完了の助動詞「ぬ」が付きて、現世に儚く「消え去ってしまった、終ってしまった」と歌はるるは、長く慕はれまほしく思ふ女心に反し悲しきことなるとなりぬ。  平生、有名なる歌ひ手の歌ふ歌詞は次のやうに表記さる。  されど、原詩(原文)を探したるも見つけられず、下記

【歌詞】『浜辺の歌』/古文に隠された心情

 『浜辺の歌』は、大正時代の歌に古文が使われ、感傷的な要素が強いが、情景を想像しながら聴いていると意味の取りづらい歌詞が並ぶ。  これには、編集の際に、作者以の別人によって、第三節と第四節とがひとつにまとめられたということが定説としてあり、確証もなく不確実な事柄について憶測も幾つも重なり、このことから歌詞の内容をより不明瞭、不自然なものにしている。  歌の情景をもう少しはっきりさせるために憶測に惑わされることなく、文字として書かれた言葉の意味を拾ってみることにする。  歌詞

【随想】直訳の「直」は「まっすぐ見つめる」の意

 外国語であれ古語であれ、言葉を意訳するほうが理解しやすいことから良しとされてございます。直訳すると、不自然な日本語になり意味が不明となることも多くあり好ましくないと言われて、学校教育においても、直訳すればこうであるけれども、これは日本語としてこう訳すのが自然であると意訳を勧められます。これが、大きく誤っているとは思いませんけれども、長年外国人と一緒に仕事をしてきた経験から、必ずしも、意訳を良しとする傾向には納得いかないところがございます。  言葉はその地域の文化でございま

【随想】「ことだま」を信じなくとも言葉を使えますけれど

 最近、新聞、雑誌の記事、連絡メールを読んでいて思うことがございます。  情報を必要とする人に必要な情報として伝えるためには、「5W1H」(いつ、どこで、だれが、何を、どうしたのか、それはなぜか)という基本を踏まえることが重要とされているのにもかかわらず、この基本を知らないのか、全く忘れてしまったのか、基本を踏まえたものが異常なくらい少ないのでございます。  これは発信する側の問題なのですけれども、もっと気になるのは、受信する側に問題があるということでございます。  S