マスコミは詐欺罪の立証資料作り に邁進せよ

                          令和4年9月16日

テレビ朝日が平日の午後7時30分から放送している報道番組で9月14日に放送した内容は、親が旧統一教会の合同結婚式で結ばれて、その子供として生れた23歳くらいの女性(脱会者)が教団員である家族としての生活を語る内容であった。

自分が働いて得た収入も全て両親が取り上げて教団に献金していたとのことである。彼女の告白内容には2つの注目すべき特質が見出された。1つは教団が家族愛を最大限に利用して、1度標的にした家庭が教団から逃げられないようにがんじがらめにしてゆくという手法であり、もう1つはサタンという宗教上の概念を多用して、標的にされた家庭を一般の家庭(サタンの家族)から隔離してしまう、という手法を取っていることである。

この2つの特異な手法によって標的とされた家庭は、家族の1員が教団に取り込まれてしまうと他の家族も段々教団に取り込まれて行き、逃れることが出来なくなってしまうという恐るべき効果が示されていた。

テレビ出演してくれたその若い脱会者は家を飛び出して自分の収入で新しい生活を始め、彼氏の支えもあって何とか教団の拘束から逃れ得たという経過を誠実に、出来るだけ正確に、訥々と語っていた。同席していた元警察官僚で現在は法務大臣をしている国会議員も彼女の告白内容を素直に認めている様子であった。

小生はこれまでに「マスコミは山上容疑者の母親を追いかけ回せ」と題する文書と「あの世の存否についての科学的論争について」と題する文書で、家族愛を悪用する旧統一教会の詐欺手法と、観念の壮大な構築物である宗教的概念を悪用する詐欺手法を科学的に解析してゆく必要があると訴えて来たのであるが、今回のテレビ朝日の報道番組によって益々そうした必要性を強く感じるに至った。

旧統一教会はカルト教団という性質に加えて、極めて高度に組織された詐欺企業としての性質を併有している巨大組織であることが明確になって来ている。

詐欺罪の行為について、日本評論社が出版している基本法コンメンタール刑法では次のように解説している。

「人を錯誤におとしいれて、その錯誤にもとづく交付その他の財産的処分行為をさせて財物を取得し、または財産上の利益を得ること」そして「欺く」とは「人を錯誤におとしいれるような行為をいう。すなわち、欺くとは、相手方をだまして真実と合致しない観念を生じさせることである」と。

それをしなければ「サタンに取り込まれる」とか「サタンに支配される」とか脅迫して献金させたとするなら、「サタンに取り込まれる」とか「サタンに支配される」という可能性について「真実と合致しない観念」を生じさせた結果とするなら、欺くことになる。従って、詐欺罪にはならないと旧統一教会側が主張するのであれば、まずは「サタン」なるものの存在を立証しなければならないことになる。「サタン」なるものが、この世に存在しないのであれば、真実と合致しない観念を生じさせたことになる。

旧統一教会は「サタン」の存在を証明出来るのか。私が「あの世の存否についての科学的論争について」の中で「科学者、宗教学者、そして現役の宗教家を総動員して『あの世』『霊魂』の存否について現代の智者の意見を洗いざらい聞くというような総合的科学番組を企画して欲しいものだ」と主張したのは、サタンの存在を前提とする脅迫行為が「真実と合致しない観念を生じさせること」に該当する可能性が十分にあると考えているからである。

 詐欺の手法として「家族愛による縛り付け」という行為と「サタン」という宗教的概念による脅迫行為を多用している組織的詐欺集団である以上、マスコミの追求はその2つの手法の両面にわたって科学的メスを入れるべきであり、警察、検察組織が詐欺罪の成立を視野に入れて旧統一教会の教会長以上の責任者の身柄拘束にまで踏み切ることの出来る資料作出にマスコミ関係者も全面協力すべき時期に来ているのではあるまいか。

教会長以上の責任者全員の指名手配と身柄拘束をした後では保釈保証金の価額を1人最低1000万円から最高500億円くらいの金額にまで担当の裁判官が決意するくらいの支援材料をマスコミの方で作り上げる必要があろう。

その為にも「あの世」の存否についての各界の識者による科学的討議が不可欠であり、その一方で刑法学者による詐欺罪の構成要件該当性の検討も不可欠である。

文鮮明氏と岸信介、金丸信あるいは安倍晋三氏との政治的な交遊関係は政治的な戦略戦術問題であるから、しばらく脇に置いておいて、マスコミ関係者は詐欺罪の立証に役立つ資料作成に専念すべきであろう。今はまず詐欺被害者の救済こそが優先されるべき事案であると考える。

マスコミは今現在、政治家が旧統一教会やその関連団体と少しでも関係があったことを大げさに取り上げているが、政治家が選挙活動の一環である集票行動に熱心に取り組むことは当然のことである。今のマスコミが一体、政治家の何を批難しているのかよくわからないところがある。

批難すべきところがあるとすれば、詐欺組織の詐欺活動を政治家として応援したという点であろうが、その行動がはっきりしているのであれば、大いに批判しても良い。しかしその為には詐欺になるという犯罪性を当の政治家がしっかり認識した上で、その組織で講演したり、祝電を送ったり、選挙活動の応援を依頼したという事実の確定が必要なのではあるまいか。マスコミはそこのところを十分に確認しているのであろうか。多いに疑問である。それよりもむしろ詐欺罪の立件を長い間考えて来なかった警察や検察庁の怠慢をこそ批難すべきではないのだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?