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「イマジン」の歌詞について

僕がビートルズを初めて聞いたのは中学1年の時で、親友のイノウエコウイチが「おまえこれを聞け」といってくれたのが赤いジャケットの2枚組のアルバムを録音したカセットテープでした。これがめちゃめちゃ気に入ってしまってしばらくはビートルズばかり聴いていたように記憶しています。1977年のことですから、ビートルズが解散して7年目、ポール・マッカートニーはウィングスで活動していましたが、ジョン。レノンは育休中でした。中学生の頃におそらく「イマジン」も聞いていたはずなんですが、あまり印象に残っていないのでいまひとつピンと来ていなかったのだとと思います。

中学でビートルズは飽きるほど聞いて納得したこともあり、高校に入ってからはセックス・ピストルズやストラングラーズなどパンク・ロックを聞いていました。そんな所へジョン・レノンの新譜が出てすごい話題になっていたのですが、僕は「へぇー」ぐらいな感じでそれほどちゃんと聴くこともありませんでした。ところがですね、忘れもしない12月8日ですよ。同じクラスのマツモトヨシコさんから電話がかかってきて何かと思ったら「ジョン・レノンが死んじゃった」て言うじゃないですか。自殺?麻薬?アーティストは普通ではない死に方する事が多いですからね。ピストルで撃たれたと知ったときはさすがに呆然としましたね。「愛と平和」の人がなんでそんなことになるのかと。

「イマジン」を聞き直したのはその時ですね。何度も何度も聴いて「そうか、ジョンは殺されることで神になったんだな」と一応納得したのでした。当時はあまり英語も良く分からなかったし、思想のこともよく分からなかったのでとりあえずパンクの世界に戻って「アナーキー・イン・ザ・UK」なんか聞きながら頭をタテに振っていたわけです。

「イマジン」の歌詞を意識して聴くようになったのはだいぶ大人になってからでした。結構真剣に英語を勉強したのでインターネットが普及してからはロックの歌詞を検索したり、歌詞を翻訳している人のホームページを冷やかしたりするようになっていました。イマジンの歌詞が気になるようになったのはそんな流れからです。「想像してみよう、国が無いことを」なんて歌っているわけですよ。これってアナキズムじゃないですか。ただ、ジョン・レノンがアナキストだったという話はあんまり聞きませんね。ロックの世界でアナーキーといえばピストルズの専売特許みたいなものだったわけです。でも、国境があるから戦争が起こるわけで「国境がなければ戦争しなくていいじゃん」というのがジョンレノンのメッセージだったわけです。

実はアナキズムの思想とはまさにこういうことなんですよ。国家という上からの命令で殺し合いをするのは全くのナンセンスだと。「軍を持っている国から攻められたら自由を奪われるじゃないか」という人もいます。それはそうです。尤もなことでございます。ただね、世界中の人が戦争をしないと決めれば軍隊は必要なくなるのですよ。

イマジンの歌詞の最後はこうなっています。
You may say I'm a dreamer but I'm not the only one.
I home someday you will join us and the world will be as one.
この部分は
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君は僕を夢想家だと言うかも知れない。でもそう思うのは僕だけじゃない。
いつか君が仲間になってくれたらいいね。そうしたら世界は一つになる。
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という感じに訳されることが多いですけどこの訳は最後がイマイチですね。

この歌詞をよく読むと「戦争が無くならないのは、『戦争は無くならない』と思っている人がいるからだ」というのがジョン・レノンの言いたいことだと分かります。『戦争はいらない』という人だけの世の中になれば本当に戦争は無くなるのです。「そんなのあり得ない」って思いますよね普通は。でも、「そう思う君が戦争を起こしているんだ」というロジックになっているのです。

で、最後の "be as one"は「ひとつになる」ではなく「そのように(戦争のない平和な世の中に)なる」と解釈するのが正解ではないかと思うのですよ。"one"には「1つ」という数詞としての用法の他に「それ的な」という代名詞としての用法(itの抽象型)があるじゃないですか。どうですこの解釈?

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