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「Life by You」から広がるライフシム細分化の可能性

人生シミュレーションゲーム(ライフシム)の金字塔『Second Life』にも携わった、ベテランプロデューサーの手がけるライフシム新作『Life by You』が2024年6月にリリースを迎える。複数回の延期を経てリリース日が決まった今作は、それだけに多くの期待が同界隈から寄せられている。

『Life by You』が注目を集めるのは、なんといってもオープンワールド空間で意のままに人々の人生や生活を設計できる、シームレスな仮想体験だ。プレイヤーの興を醒めさせかねない、エリア切り替えのたびに発生するローディングとはおさらばし、ゲーム内のキャラクターたちとのコミュニケーションやアクティビティを自由に楽しむことができる。

また、MODを使って全く新しいゲーム性を作品の中にもたらすことのできる、メタな拡張性についても同作品のアピールポイントとなっている。プレイヤーが求める体験、あるいは試したいことを自由に『Life by You』の世界を使って試行錯誤することができるわけだ。

ライフシムと言えば『Second Life』からも想起されるように、擬似的な人生体験を仮想世界でも味わえるような作品を指すことが多かった。しかし今作『Life by You』のように、高度に自分の人生をデザイン、あるいは自分の周囲に住む人々の世界をデザインしたり、MODによって仮想空間を丸ごと実験場にしたりするような遊び方も、ライフシムの一種として扱われている。

これら二つの体験は、目的も手段も似て非なるものである点には注目しておきたい。
『Second Life』的な体験はあくまで現実世界のようなコミュニケーションや生活を仮想空間に求めるために提供される一方、今作については現実世界を模した空間で好きなように世界をコントロールしようという体験を提供する作品なのである。

つまり、前者は文字通り「第二の人生」を歩むためのゲームであり、後者は「現実の拡張空間」を体験するためのゲームなのだ。魂ごとゲームの中に入り込むのか、魂を現実世界に据え置きながら「ゲーム」として作品を楽しむのか、という違いとも表現できるだろうか?

前者は現実世界と切り離された、まさにシミュレーションとしての側面が大きく、後者はメタな体験を前提とした、現実世界の自分ありきの複雑性の高い作品とも言えるだろう。

とはいえ、これはどちらが偉い、あるいは優れているという話をしているのではなく、あくまで楽しみ方のポイントが異なるという点を取り上げているだけである。
ライフシムというジャンルを一つとっても多様な遊び方や創意工夫ができるようになってきた以上、ライフシムにも細分化によって棲み分けを考える必要が出てきているかもしれない。

メタバースの登場や「あつ森」の大ヒットもまた、ライフシムというゲームジャンルについて熟考する上で、見逃せないトピックになりそうだ。

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