2022年3月18日(金)

    ガラの処分をして、こうちゃんはまた肘の調子が悪くなってしまった。途中まで仕上げた現場だったのに、手違いのためやり直しになってしまったのだ。造ったものを壊してできたガラだから、心も辛い。凄まじい振動の中、コンクリートや資材は崩されていく。私が以前に手伝ったのは、鉄筋で串刺しになったコンクリートを処理袋に入れる作業だった。結婚前のこうちゃんと二人でやったのだった。腱鞘炎になり、しばらく苦労した。一生お住まいになるかも知れない施主さんを思えば、よくあることでは断じて済まされない。そうならば、余計なガラを生まないためにはどうしたら良いのだろう。
    家事をこなした後、炬燵でくつろいでいるこうちゃんと一緒に、テレビで凄まじいガラを見た。頭の中で十度見した。昭和?戦国?ウクライナの?これを現実だっていうのだろうか?家事をしながらずっと考えている。どうしてここまで酷いことをするのだろう。どうしたらこんなことが起きないようにできるのだろう。
     一個人の虚栄心が招いた結果というなら、虚栄心は誰にでもある。身近なあの人がもし権力をもったなら、と考えてみれば良い。それならば、もし私が権力をもったなら?いやいや、気付いていないだけで、彼の国とは比べ物にならない小さな組織であっても、実際に権力を振るった事実があったとしたら?それならば、私の中の小さなプーチンをロックオンするしかないんじゃないか。
    そういえばずっと、逆のことも考えていた。YouTubeで以前、マザー・テレサを糾弾する動画を見た。ワンピースのビッグ・マムは、マザー・テレサがモデルだという説もあるそうだ。こんな動画はどうでもいい。おかしいのは聖人という考え方だ。どうして一人の人間に、こんなにも巨大な光を背負わすのか。それぞれが自分の中の小さなマザー・テレサを、光を、抱きしめるべきじゃないのか。
    今朝もこうちゃんはダンプで、住まいを造りに出掛けていく。ロシアでは、住まいを破壊しに行く夫を見送った妻がいるのか。ウクライナでの蛮行を指示した人は、トイレで一人になったとき、いったい何を思っているのだろうか。

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