花知らず //220228四行小説

 道なりに植えられた桜を見上げていると、隣の君
もつられるように見上げた。蕾が膨らんできていて、春が着々と訪れていることを感じた。確か明日から暖かくなると天気でも言っていた。
「西館に何か咲いてたよ。梅? かな。今の時期なら多分梅!」
 君は花についてあまり詳しくない。詳しくないけれど、花が咲いたり匂いがしたりするとどこか嬉しそうだった。詳しくないからといって、好きではない訳ではないだろう。芸術を感性で受け止めるように、季節の移り変わりと花の行く末も知識ではなく肌で感じるものだ。
「今日は西館に行ってないんだよね。明日見てみようかな」
 梅か、桃か、なんだろう? けれど本当は何が咲いているかなんて関係なくて、君が綺麗と感じたその花を同じように見てみたい。白い小さく咲く花の名は知らなくても、花を愛でる心はここにある。

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