犬に毛布を借りた話 //211229四行小説

 あまりの寒さに犬の毛布を借りた。こたつは出していないし羽織るものは近くにないしまだ部屋も暖まっておらず、暖を取れそうなものがその毛布しかなかったのだ。比較的新しく冬物で元々は人用に販売されているものだから、問題なく使えるはずだ。
 一応犬に一言言って、借りることにする。犬は他のもふもふした場所にいて今は使っていないので大丈夫。一瞥するだけで顔を背けたから、了承も取れたはずだ。
 そろりと毛布を拝借し頭から被る。ふわふわとした質感が肌に優しくて、そのままじっとしているとだんだん暖まってくる。新品のものを使うより、人が少し使ったものの方が肌に馴染みがいいように、犬が少し使った毛布も肌馴染みがいい。匂いもまだしっかりとはついておらず、犬が横で添い寝してくれたときのような仄かな匂いしかしない。だからどうにも落ち着いてしまってうとうとしていると、気付けば一時間が過ぎていた。
 こんなはずでは無かった……と時計を見上げながら嘆き、目を擦ったあとに目には入ったのは同じく寝ていたのであろう寝起きの犬。しっかり寝れたのか、スッキリとした表情で尻尾を振りながら行儀良くお座りしている。「おいで」と声をかけると、その言葉を待ってましたと言わんばかりに私の腹に飛び乗って、よじよじと胸まで這い上がってくる。頭を差し出し撫でろと要求され、毛布ごしに暖かい重みを感じながら貸してくれてありがとうと気が済むまで撫でてやる。

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