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信州ブレイブウォリアーズの問題ってなんだったんだろう? 2022-23 season

B1リーグのレギュラーシーズンが終了し、いよいよCSが始まりますが、信州ブレイブウォリアーズはCSに出場することができず、一足先にシーズンを終えました。

今シーズンは昨シーズンに勝率5割を超えたチームの主力をほぼ残留させたことで、完成度の高いチームとなりチーム初のCS出場が大いに期待されていました。

しかし、その期待には及ばず、(29勝30敗)、中地区3位となりました。

はっきり言って期待外れのシーズンでした

それは単に成績の話ではありません。私が1番ガッカリしているのは「信州ブレイブウォリアーズ」という組織に対してです。
なぜなら、今シーズンのコート上で起こった問題は突き詰めていけば、選手やコーチを超え、チーム設計そのものが間違っていたから発生したと考えているからです。そして、これを改善しない限り信州がCS、ましては新B1へ進むことなどないでしょう。

そこで今回のnoteでは

・今シーズンの問題とはなんだったのか?
・なぜその問題が起きたのか?

こんなことを考えていきます。


信州の問題

まずは信州のコート上での問題点をいくつか挙げていきましょう。

①怪我人の多発
②プレー精度の低さ
③対強豪の勝率

もっと細かくしていけばいくらでも出てきますが、おおまかに挙げればこんなところでしょうか。

①怪我人の多発

今シーズンも多くの選手が離脱を繰り返し、フルメンバーが揃った試合はシーズンを通してほぼありませんでした。

外国籍ではマーシャルが横浜戦から長期離脱すると、そのマーシャルの代わりに入ったモズリーも怪我により1ヶ月程度離脱。そのため、インサイドがホーキンソンに頼り切りという状況が多くありました。
また、そのホーキンソンが日本へ帰化したことで練習生のバーンズと契約します。しかし、バーンズはすでにプロのプレーレベルに付いていけないうえ、コンディション不良により離脱を繰り返しました。

日本人選手も細かい怪我による離脱を繰り返し、その皺寄せによる負担増で怪我のリスクも増えていくという、負のサイクルに入ってしまいました。

怪我人の発生は、1試合単位で辛いというのはもちろんですが、連戦で体力がもたない、シーズンを通してチームを完成させられないという問題を発生させます。
特にマーシャルのポジションが全くタイプの違うモズリーに変わったというのはチームの戦術に大きく影響したでしょう。

これが②の「プレー精度の低さ」につながります。


②プレー精度の低さ

過去3シーズンの主なスタッツの変化を見てみましょう。

平均得点 71.9→77.7→75.1 
平均失点 75.0→75.8→73.4
FG%     41.7→45.0→43.0
3P%     32.0→34.7→30.9
TO     12.8→12.2→12.2

チームのアイデンティティであるDFは安定しており、今シーズンは昨シーズンから2点以上平均失点を下げました。これはリーグ3位の成績であり、リーグトップクラスのDFチームとしての立場は確固たるものになっています。

一方でOF面では大きく悪化してしまいました。
とにかくシュート確率が悪く、得点が伸びませんでした。これはそもそもの選手の能力もありますが、①で触れたように怪我人の多発でローテーションがキツくなり、疲労が溜まりやすくなったことも無関係ではないでしょう。
特にインサイドを1人で支えるシーンも多かったジョシュには大きな負担がかかっており、明らかにシュートの精度が過去2シーズンに比べ落ちていました。

ただ、怪我人を理由にこの問題に蓋をしてしまうのも間違いです。信州はリーグの中でシュートが下手なチーム。特に3Pに関しては壊滅的であることを受け止めなければいけません。

信州のOFは3Pを多投し、OF効率で打ち勝つことをコンセプトにしています。なのに3P%がリーグ最低レベルでは勝てないのは当然でしょう。
また、熊谷、岡田、前田という日本人屈指のスラッシャーを持っているわけだから、彼らを最大限活かすにはウィングの選手がキックアウトからの3を決めることが重要です。それができればコートが広がって3人のドライブをもっともっとやりやすくなり、OFがどんどんスムーズになっていきます。

この役割を担うべきなのは三ツ井、栗原、サイモンなのですが

三ツ井:28.4% 
栗原:31.5% 
サイモン:26.9%

あまりにも寂しい数字です。
難易度の高いプルアップ3を多く打つようになった前田が32.3%と確率を上げてきたことを考えると、これらの選手は仕事を果たしているとは言えないでしょう。
しかもこれが今シーズンに始まったことではないのが頭が痛いポイントです。

信州は成長できているのか?

結局のところ今シーズンの信州は、ずっと課題としてきたシュート%の部分を修正することができませんでした。もちろんスタッツが全てではありませんが、昨シーズンから成長した部分がわかりにくいのも事実です。

そして、信州の成長への疑念はスタッツシート上だけでなく、勝敗にも表れています。


③対強豪の勝率

これも昨シーズンから続く問題です。
CSへ進出したチームとの対戦成績を見てみましょう。

2022-23season(vsCSチーム)
4勝15敗(勝率27%)

はい、全く勝てていません。特に同地区のライバルであった川崎と横浜相手に1勝7敗と散々な結果となり、CS進出を逃す決定的な理由となってしまいました。ここも昨シーズンから続く問題です。

上位陣と戦っていて差を感じることは、手札の多さの違いでした。
千葉で言えば、ギャビン、ロー、ムーニーのビックラインナップからスミスを入れた機動力重視のスモール、富樫、小川、原のスリーガードで外の火力を増やすなど、状況に応じたラインナップを敷くことができます。しかもこれが全部ハイレベルなんだ。

信州はゲームの中で戦い方を変えることはあまりありません。それはマイケルが一貫したプレーを求めているからではありますが、やはり相手のラインナップやDFの応じて対応する柔軟性もまた大切なのではないだろうか。

戦術的柔軟性が欠けている

ここは選手のプレーもそうですが、コーチ陣の課題になってくるでしょう。


問題の原因は?

さて、3つの問題点を挙げたわけですが
では、何が原因でこれらが起こったのでしょうか?

当然原因は一つではなく、複合的なものですが、あえて一つ挙げるとすれば     

チーム全体の層の薄さ

ではないかと思います

●ロスター人数
今シーズンの信州は開幕を11人で迎えました。
そもそもが少ないわけですが、ルーキーのサイモン・主な出番がファウルトラブルが起きた時と欠場者が出た時ぐらいだったマシューを含めているため、実質的には9人体制だったと言えるでしょう。

9人ローテ自体はないわけではありませんが、バックアップの2人が経験が浅い選手であったので、あまりにも怪我のリスクに対して脆弱なロスターでした。
昨シーズンの広島なんかも開幕時は11人スタートでした。例に漏れず、広島も怪我に苦しんだわけですが、それはシーズン後半の大学生獲得を見据えてのことだったので信州の事情とは若干違います。

信州はジョシュの帰化を見越していたわけですが、それを含めても日本人選手はあと1人獲得できたはずです。
せめてもう1人PGを加えておくか、途中で特指を獲得するなりしておけば…



●コーチ陣
選手の層の薄さに輪をかけて酷いのがコーチ陣です。
今シーズンの信州のコーチ陣は
勝久マイケルHC  久山topAC  井上AC
という布陣でした。

….いや、少なすぎるだろ!!!!!

そもそもコーチが3人は少なすぎる上に、井上ACは選手を引退して1年目でコーチとしては新人です。ですので、実質的には2人しかいないわけだ。
この人数で戦術立案、練習指導、スカウティングetc…多岐にわたるコーチの仕事をこなすなんて時間的に無理ではないでしょうか。少なくとも全てが満足いくまでできているとは思えません。
マイケルはこれに加えてGM業まで兼ねているしね。

また、これだけの怪我人続出を考えればメディカルスタッフの拡充は必須と言えるでしょう。

コーチやスッタフはチームの基盤です。ここが充実していないチームはどれだけ選手が優れていても勝てませんし、長期的にみて選手から選ばれるチームにはなれません。
逆に言えば、信州はこれだけ基盤がユルユルの状態でよく5割近く勝ててるなぁという印象です。

あまりにも基盤となる部分を甘く見ていた信州

なので、個人的にはコーチ・スタッフ陣の充実こそが来シーズンの最重要課題だと思っています。
例えば…OF構築力の高いAC、シューティングコーチ、ビデオコーディネーター、トレーナー、スカウトマン…例を挙げ出せばキリがないほどに抜けているポジションはあります。

たとえ今オフに主力の選手を数人失うとしても、コーチ・スタッフを充実させることが長期的にはチームのメリットになるのではないでしょうか。



来シーズンに向けて


今のリーグはコート上の「チーム」対「チーム」の段階を越え、「組織」対「組織」の段階へ入っています。
その結果リーグには、選手にとって魅力的な環境を提供できるチームが多く誕生しています。そういったチームに近づくためには、組織として短期的な成功ではなく長期的に成功を描いたヴィジョンと、持続的な経営力が求められます。
信州はB1で戦うチームとしては、こういった要素が圧倒的に足りていないように感じました。

それでも、リーグで中堅としての立場を確立できたのは素晴らしい成績でした。

でも今の信州では、やっぱり長期的に安定しないよね。

どれだけ素晴らしいチームを作り、有望な若手がいても、組織としての持続的な経営力がなければ長続きしません。それは今シーズン降格争いをした滋賀、新潟、富山が証明しています。
いずれのチームもリーグの中で眩いばかりの存在感を放っていた時期がありました。でも、たった数シーズンの今の有様です。楽観的に信州がこうはならないとは個人的には思えないかな。

だから、来シーズンは優勝は長期的な目的として置きつつ、1度チームの体制を見直すべきだと思っています。
先述したようなコーチ陣、スタッフの充実、練習環境の整備、営業や広報人員の拡充...やるべきことはいくらでもあります。

千葉は初めから強靭な経営力を持っていましたか?
島根は強いからスポンサーが付いたのでしょうか?


コート上での問題点を考えていった結果、今の信州には、きっとコート上よりもコート外にやるべきことがあるのではないかと思ったシーズンでした。



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