どうしてこうなる。

先週土曜日からろくに眠れていない。睡眠導入剤や安定剤は飲んでは    いる。

痛い。右手の小指の突き指。
土曜日の夜、彼がこちらに泊まりにきた。
翌日曜日のこと。
二人して温室のある公園に出掛けた。

あまり文句はいいたくはないけど、途中、彼の思いつきから２軒のリサイクルショップに。レディースではなくて彼の上着を見に行った。

あまり古着はあの人は好まないけど中には新品と変わらないものやデッドストックがあったりするから。

サイズの問題や好みが合わなくてなんにも買うことなく目当ての温室がある広い公園へ行った。

以前にバス釣りのために来たことがあるとは言ってはいたけど。私もそこに行くのは数十年ぶりだったから。

国道を走る。
途中を左折する。
田舎道をひたすら。

高速を走れば早かったけど運転は私ではない。

あれ？
あれ？こんなところだっけ？と彼が悩むので私はスマホを取り出しGoogleマップでナビを始めた。
カーナビもついてはいるけどGoogleマップの方が正確だから。

目的地の公園は広いけど午後４時にはしまってしまう。

寄り道したために時間が押している。

土曜日は彼が先に眠ってしまった。そして寝言は仕方ないけどその内容は私が聞きたくなかった内容だった。

眠れない………。

仕方なくキッチンでリースを編んでいたらすっかり夜中の２時。

あれ？朝？喉渇いた、と彼、R氏が起きてきた。

違う、未だ夜中と返して二人して飲み物を飲み、私はもう一度、足らなくなるな、と思いつつ睡眠導入剤をあらためて飲んで眠った。

翌日曜日の朝。

起きたのもやはり私が先で。

コーヒーとトースト、ベーコンエッグを出す。

出掛けるなら支度して行こ行こ！くらいないと、と急かされあわてて化粧をする。

……。こんな時は男性がうらやましい。女性は着替えとメイクが     いる。

寄り道途中、本心は嫌な予感が心にありもした。

彼は長い距離を歩くのが嫌いだし私はそうでもないけど寒い寒いを繰り返す。

閉園時間が迫るから公園をあとにした。

本当はもっと早くついてゆっくりしたかった。

あしたは仕事ね、帰っちゃうから寂しいね、にもう一晩泊まるか、着替え、とりに帰るから、という彼に途中のDAISOで待つから、と話をした。

うちの冷蔵庫は一人向けで小さい。あまりものは入らない。

何を食べるか？となりマンションに戻る途中、スーパーに寄ることになったけどメニューも決まっていないし、うちはIHのクッキングヒーターなので調理メニューが限られてくる。何しろ一人だしフライパンも小さいのが一つ。
パスタ用の鍋を購入したものの、他は小さな片手鍋と小さな両手鍋で以前みたいにガス調理はできない。

野菜とか食べないと！とかわかっているけど何しろ一人ではなかなか大量な野菜は普段は困る。しまう場所すらないのだから。ましてや先の地震で疲れている。
うちのダイニングは被害甚大だったし大きな戸建てとは訳が違う。

スーパーにつく前に彼のイライラが始まるのはわかった。

だいたいお腹がすいたら男性は特にイラつく。ましてや長い道を途中、間違え、大回りして結局、高速道路に乗ったわけで。

私はあわてた。
早めに作れて出せるものでメニューは限られてくる。朝の食器もそのままだし、とりあえず、魚とアボカドをわさび醤油で和えて丼にしたいと申し出た。

スーパーの中。いろんな人がいる夕暮れ。

実は他人と買い物が苦手だから困る。
会計は私ではない。

イライラしているのはわかる。

周り見て！    ほら人が来る！

そりゃいろんな方向からお年寄りや家族連れは歩いては来る。

材料をみていたら激が飛ぶ。

早く！もうそっち行かんよ？

焦る。

とりあえず腕を後ろ手に回していたらイラついて買い物かごを持っていた彼が私の右手小指にかごを引っかけた。

故意ではない。気づいていないから。

「痛い！！！！」叫びたかったけどこらえた。

痛い。ひどく痛い。左手で右手をかばいながら脂汗が出てくる。なんにも文句は言わなかった。

早く帰りたい……。
それだけだった。

レジの前で言われた。
何してるの？なに？それ。

小さな声で早口で私は彼に言った。

……あなたのかごが右手に引っ掛かったの。

イライラしているのはわかる。車の中でも彼は怒鳴り散らす。

私は萎縮して泣き出してしまった。

わざとらしい。大袈裟だ。怒らせないで！もういい。送って帰る、ここまでわざわざ来て損した。

心では思った。

実際、誰にも私はスーパーではぶつかりもしなかったし逆にお年寄りにぶつかられそうにはなった。イライラして周りの目より自分のつれが大丈夫か？ではないか。

痛いけどわかった。私が悪かったですごめんなさい。

泣きながら謝る。

未だ怒っている。
どうするん？行っていいの？それとも帰ろうか？

痛さに言葉につまる。

彼は続けた。
どうもないで？それともなに？嘘ついてるの？

周りはもう暗い。明るくはない。

彼は怒鳴り続けた。
あー？今から病院行くん？大袈裟やな！は？どうするの！！

私はますます萎縮してしまった。

わかった帰る💢
知らん！！  

マンションの前に車をつける。

ずっと泣いていた。酷すぎる。せめて明るいところで確認して欲しかった。

叫びたいのをこらえて、ありがとう、とエレベーターの前に走る。エントランスの明かりで痛む小指を見たら赤い跡がついている。

彼を振り返るともうすでに車は走り出している。

突き指は時間が経つと腫れて来る。こんな突き指なんか小学生の時の体育以来だ。

部屋に戻って泣き崩れてしまった。

指はごめんなさい反省してます、とメッセージは来たけどなんだか惨めになってしまった。
そして        嫌な気持ちはお互い様、とある。

ガミガミしたメッセージも来た。

どうした？いつもならしつこく言い返すくせに。周りにいえば？訴えたら。裁判するか？

言葉を失った。

嫌な気持ち？私はケガしたのに気持ちの問題なんかではない。ひどい。

痛さにまた眠れない。落ち着かない。

明け方、起きたら読んで、とメッセージを送った。

突き指してます。これではなんにもできません。仕事にも家事にも障りが出ます。
Wi-Fi、とかそのうち返してください。あなたより稼げないけど私も仕事にはなりません。

そして昼のメッセージ。

未だ動揺して怯えていて朝、自分が声が出せないことに気がついた。しゃべれない。
話そう、としたら動悸や吐き気、めまいがする。頭痛が始まる。猫にすら話ができない。

昼前のこと。

Wi-Fiはずしたから昼にそちらに持っていきます。指はごめんなさい。

今はやめて、と返した。

会いたくない、怖い。ふらふらする、フラッシュバックが起きる。

携帯が鳴る。チャイムが繰り返し鳴る。

Wi-Fiその他を袋に入れて彼は現れた。私はロックは開けたがチェーンははずせなかった。怖かった。

急いでよ仕事戻らないと。彼はいう。

玄関に袋を置き、ごめんな、はい、病院代、と２万、裸銭を玄関マットにおかれた。

お金が欲しかった訳じゃない。きちんとケガした指をみてから「ごめん、悪かったね」の一言だけが欲しかった。なのに。

あまりの怒りと悔しさと惨めさがごちゃごちゃになり、私はドアから通路にそのお札を投げて返した。

ばかにしないで！  叫びたくても声が出ない。

病院行って診断書取れば、本気で警察にも行けばこれは微罪のようでも過失による傷害罪になるけどそんなことはしたくない。したくないんだ。

話ができない。彼はあまりストレスだのノイローゼだのメンタル問題には理解がない。

もうメールはしない。当分一人にして、なんか勝手すぎないか。

私は今、指は固定している。ひどく痛む。

言葉が、声が出ないから他人とも筆談している状態で。メールを読まないなら意思は通じない。

ひどく痛い。心も突き指している小指も。

どうしたらいいのかわからない。
   
                     ゆー。