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ロールプレイングゲーム     〜    あーちゃんへ

あーちゃん。
ママは良いおかあさんではなかったかもしれないね、と思いながらウエディングドレスのあなたの手を取り、2016年の秋にあなたと一緒にヴァージンロードを歩いたよ。
あなたがお嫁さんに行ったあの日も空は青く澄み渡っていて晴れていて。良いお天気でしたね。

良かった、いい人に巡り会えて・・・。
披露宴は身内だけの手作りの結婚式。

ウェルカムボードも絵を描くのが好きだったあなたの丁寧な作品だったね。

ぼんやりと頬杖をつきながら  申し訳なかった、と、小さな頃のあなたの泣き顔や笑顔、生まれてきてから初めて私を見て泣き止み、涙まみれの赤い顔で口をまぁるく開けて笑った赤ちゃんの頃の思い出が頭の中で交差していました。

どんな内容の披露宴なのかわからない。あなたと彼が考えて考えて二人でこしらえた演出は事前には知らなかったし、なぜ、いきなり、ママ?最近好きな音楽とかなぁに?最近何聴いてる?? なんてあなたが電話かけてきたのかも気にも留めていなかったのよね、ママ。

セカオワとか好きで最近聴いてるけど、どうした?    
     セカオワ!?ママ若いな! ふーん。 

  ・・・。悪いん。今でも他のロックも聴いてるけど。ヴィジュアル系も。
   
丸いテーブルには白いクロス。同じテーブルには久しぶりに会う弟とその家族。
借りてきた猫みたいな気持ちになって居心地が正直なところ、あまり良くなかったよ。ママ、激太りしていたし、周りからは勝手な女だって言われてるのを知っていたし。いじけてもいたし。弟一家以外は見知らぬ人ばかりで、心もとなくて。情けないんだけど。

披露宴が始まる・・・。

いきなり会場が真っ暗になるから ? ってそのときは怯えたよ。ママ、病んでいたしね。


どんたとどんた どんどたたど♪チャチャ♪どんたとどんた どんどたたどん!
そらはあーおくーすみわたぁりうみをめーざしてあるぅくぅこわいもーのなんてなぁいーぼくらはもーぉひとりじゃなーい!




   RPG?? セカオワじゃないか! なぜ??

スクリーンにはあなた達二人がこしらえた二人の家族や友人のプロフィールと二人の出会い。他の人の紹介は褒めちぎってるのに。ママのプロフィール文は

「怒ると鬼のように怖いママ」 で始まったね。

会場が暗くて良かったよ。恥ずかしくて恥ずかしくて。ちっとは褒めてくれよな、って思ったよ。

真っ白な純白でなくてあえてアイボリーホワイトのジル・スチュアートのドレスはチャペルの中ではゆっくりとは見られなかったけどまるでフランス人形みたいなあなたが眩しくて。もうママのものではなくなるんだってさみしくて。

よくよく考えたらあのとき、ママは事前にあなたにお願いしていたね。ママはお酌してまわるのはイヤだからね、勘弁してよ、って。だから気を遣わせたね。

そうなんだよ。人生をゲームにたとえたらまさにRPGなんだよね。音楽が好きで本や文章が好きなあなたの中味はママによく似ているから、だから披露宴の始まりに歌詞の内容をよく読み込んでいて。だからセカオワのRPGを流したんだよね。ママがセカオワが好きだからではなくて。素直に嬉しく思いましたよ。

手作りの結婚式で流れた映像の締めくくりにあった一言がありがたくて。ママもその中の一人に入ってるってだけでね。

ここにいる愛するみなさん
 みんなのおかげで私たちは元気で、幸せです。


早いね、あーちゃん。あなたが生まれて来てくれてから、今度の春で33年も経つんだね。

4年前、あなたがお嫁さんに行った日はママはなんにもしてあげられなかった。

そしてあなたも母親に、おかあさんになったんだね。親子でセカオワ聴いてるってママ、嬉しいよ。親子3代でセカオワが好きだって。いつかあなたの子供、私の孫があのバンドの本当の素晴らしさをわかってくれるってママ思うんだ。

ママとおんなじ3月生まれのあーちゃん。小さくて可愛くて可愛くて。ママは自分勝手に生きてきたけどあなたを忘れた日は一日たりともなかったよ。

日に日に成長していって。
小さかったあなたはいつの間にか素敵な大人のレディになったね。

小さな子や弱い立場の人に優しいあなたは、石を投げつけられていじめられていた幼い子を身を呈して庇い、投げつけられた石が自分の脚に当たって。脚を真っ赤に腫らしていて・・・。それでも笑いながら小学校から帰ってきたのをママはよく覚えています。あなたの手を取り、学校に猛抗議しに行きましたから。へんてこな正義感の強い頑固なところもママによく似ています。毎日パトカーが来るようなめちゃくちゃに荒れていたあの中学校にたった一人で戦いを挑み、公文と自宅学習だけで学校には行かずに。テストの日だけ登校していて。学校に行くのを拒んでいて。
毎日あの頃はハラハラしていましたが。
親の私が言うのも自慢げでなんですが成績は優秀すぎて。心の中では思っていました。「・・・ざまあみろ!・・・・。 うちの娘は頭がよくって。そして、そして!  何よりも可愛くて無敵だ!」って。


わずか八歳であなたは大人のイヤな一面を見てそれでもママに勇気をくれました。そしてママとあなた、二人きりの戸籍になったのはあなたが九歳のお誕生日でした。
あの日、あなたが泣かずにいて、精一杯の強がりの姿で自宅の片付けを手伝ってくれて。
そんなあなたが母親になるって聞いたときに「ママが私を育ててくれたように子育てをします」っていうあなたはとても強いおかあさんになるんだろうな、って。

学生時代はロリータファッションであだ名が 姫ちゃん でしたね。
もう2年、あなたに会っていないけどしっかりもののあなたは全力で「おかあさん」を毎日こなしているんだと思いながらママもまだまだへこたれたりはしませんよ。
だって、人生はRPGみたいなもので何が起こるかわからないからこそ楽しくてワクワクして、迷いながら怖くても進むしかなくて。

時折、抱いては思い出しています。あなたがこしらえたテディベアを。披露宴の花束贈呈ならぬテディベア贈呈。あなたが生まれた時の体重と同じ重さの手縫いのテディベアを。

あーちゃん。早いね、ほんとに早いね。今年ももうじき終わるよ。

クリスマスが来てお正月が来て。また1年が過ぎていくね。

令和になったね。あなたが生まれてからすぐに昭和は終わり、平成になった。新しい元号はママ、なかなか馴染めないけど。あなたとあなたの大切な人たちにふさわしい元号になりますようにって毎日祈るよ。

ママ最近何聴いてる??  

実はあの質問には迷ったんです。

ママはあなたにたくさん心配かけました。迷惑もかけてきましたし、さみしい思いもさせましたが。ラインをなかなか読まないあなたが昨年夏にはしっかりすぐに既読がついていて。ママを気にかけてくれていたことに感謝します。

私ね、ママ。    
        うん?   

  最近自分の手を見ていてね、ぁあ、よく似てきたな、昔毎日見ていたママの指に、って思う。 
  
       うん。

・・・これはあなたがいつも気にしていたこと。

自分のどこかがママに似ているはずなのだけど誰もママに似ているって言ってくれない。

あなたの見た目はママにそっくりでなくていいんだ、って今でもママは思っています。
気が強くて生まれながらのソルジャーだってところはママそっくりなんだけど。

ママに人生まで似ていたら迷ってばかりでゲームが進まないし、アイテムを手に入れる前に敵に立ち向かわなきゃならないから。

あーちゃん。生まれてきてくれてありがとう。ママはあなたを初めて抱き上げたときに本当に思いました。

   一人じゃない!! って。

産院からの帰り道、晴れ渡るどこまでも青い空には太陽の光がさんさんと降り注ぎ、満開の桜に菜の花。あなたの名前にふさわしいお天気でしたよ。

ママのRPGはまだまだ途中ですが、ゲームオーバーはずっと、まだ
ずっとしませんよ。そしてあなたのRPGはまだまだ序盤なんです。

負けたくない!!がママの口癖の一つですが、あなたの存在は生きていくために強い味方で支えで、そして最強のアイテムでもありました。あなたも怒ると鬼のように怖いから。

ありがとう。あーちゃん。
これからもママ、がんばりますね。ママの人生は誰のものでもなく、何よりもママ自身のRPGなんだから。


     ゆー。

百瀬七海さんの企画Ⅱ。参加させてもらいました。

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