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備忘録。3

 そろそろ小説の感想を書けよ、と誰かにツッコミを入れられそうだが、最近の読書傾向が「新書:小説=9:1」になってしまっているので、当分先になりそうだ。それでは、本日も。

1.岡嶋裕史『メタバースとは何か』(光文社新書)

 Facebookが社名をMetaに変更したのは昨年(2021年)10月。この新書の発行は今年(2022年)1月。ハイスピードで刊行されているあたりが、時事に強い光文社新書の持ち味だろうか。
 本書を通して、現代社会を生き抜く中で従来の人間的価値観が変化しているのではないだろうかと思った。現実世界で傷つかないようにするために、自分にとって都合のいい空間に居座る「フィルターバブル」としてメタバースは最適なのであろう。これに関連して、自分のためにならないことは手を出したくない、手を出したとしても最小限の時間消費で抑えたいという近年の潮流は、話題の早送り・倍速視聴と通じる点も多いと考える。メタバースに社会はどう対応するのか。メタバースのプラットフォームを最初に制して今後10年のビジネスを牽引するのはMetaなのか、それとも他のGAFAか、まったく別の企業なのか。今後の動静に注目したい。そして、メタバースに我々はどのように関わるべきか。仕事にプライベート、人間関係などをどこまでメタバースと関わらせるかは慎重な判断が必要だ。

2.原田曜平『Z世代』(光文社新書)

 近年、よく聞くようになった「Z世代」という単語。私は一応、Z世代に属しているらしいが、本書で紹介されているZ世代の流行なるものを見てみたが、半分ほどしか知らなかった。これは偏に、私が普段使いしないInstagramやTikTokが発信源のネタが多いからである。Z世代の流行以外のZ世代の特徴、メディアとの関わり方について触れている章は非常に共感できることが多く、自己を内省する機会になった。
 少子高齢化で高齢者に有利なように社会が変動しているという言説もあるが、本文にもあるように、最近になってテレビやSNSは若者向けの企業戦略を打ち始めているのではないかと思った。最近、私がそれを強く感じたのはテレビ朝日が木曜ミステリーを終了させることを発表した時である。私はどうやら趣味が同世代と少し違っているらしく、『相棒』や『科捜研の女』が大好きなのである。その『科捜研の女』や『京都地検の女』、『遺留捜査』という高齢者向けのドラマを長年放送してきた枠を廃枠にするということには、明らかに消費者の目を意識したテレビ局の意図が働いていると考えられる(製作協力している東映側の事情も廃枠の可能性としては十分考えられるが)。企業戦略の方針転換と同時に、現在進行形でZ世代は日本社会の中で存在感を示し始めている。著者が指摘しているような特徴も年代を減るにつれて変化する可能性もあるが、少なくとも今は、Z世代を発信・承認欲求という観点から捉えることは的外れではないと思った。

3.緑慎也『認知症の新しい常識』(新潮新書)

認知症の前段階/

答え:軽度認知障害(MCI)

 上記に示したのは最近よく目にするな、と思った競技クイズでの問題文の一部だ。単語と単語のみを繋ぐことがあまり好きではない私は、身近な病である認知症がどのようなものなのか気になったので、この本を読むことにした。認知症という病は急に訪れるのではなく、何年も自分自身が行った積み重ねに起因するということを初めて知った。私はまだまだ若いため、少々無理の多いことをしてしまうが、若いとはいえど、無理なことはしないようにしようと思った。
 なんだか、老後の恐れを単純に記述しただけの感想文になってしまったが、まあいいか。新書は自分が興味ない分野も手に取りさえすれば、わかりやすい切り口で説明してくれる。なんでもかんでも気になったら手に取ってしまう私にうってつけの必需品だ。

4.安西巧『マツダとカープ』(新潮新書)

 一面でしか見ていない物事というのは、誰しも必ずあるのではないだろうか。それもそうだ、人間があらゆる物事を様々な面から見通すことは難しいだろう。私はマツダに対する印象が車の銘柄で有名な企業、といういかにも一面的な見方をしていたが、本書を読むことでマツダという企業の独自性や歴史を知ることができた。マツダを創業した松田重次郎という人物は、1回の失敗ではへこたれない。何度も会社を立ち上げて、現在のマツダの礎を築いた。本書の半分以上は重次郎の取り組んだ業績について触れており、現在まで続くマツダの挑戦の歴史の根底には重次郎の姿勢があることが窺える。企業の歴史を人物中心に取り上げた新書をあまり読んだことがなかったので、新鮮な気持ちで読むことができた。こういう新書があればまた読んでみたい。

5.菊地暁『民俗学入門』(岩波新書)

 以前から民俗学には少し興味があるため、その手の本をこれまで何冊か読んできたが、この本が一番内容的に取っ付きやすいと感じた。京都大学の名物講義「民俗学」で学生に新たな発見と驚きを提供している菊地暁の新書、読まない手はない。各章は人間の営みをやや歴史的に記述した部分と、それをそれぞれの学生が具体化した部分の二層構造に分かれており、民俗学という学問が私たちの生活にいかに身近であるかということを教えてくれる。
 普段接している内容がそのまま人類の暮らしを考える際で有用になる民俗学という学問は、普段の生活から疑問や謎を発展させる私の考え方と近いものを感じるのだ。民俗学との関連は薄いが具体例を挙げると、「自販機の商品取り出し口が外開きなのはなぜ?」のような疑問が好きな私は民俗学の視点を意識した生活を続けたい。

では、また今度。

#読書 #新書 #光文社新書 #新潮新書 #岩波新書

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