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初めて藍に染まった日

初めて染料を購入して染めてみました。藍染です。記念に書き留めておこうと思います。染色にはまり始めたのが1年少し前で、以来、道端の草や会社の土留めにたくましく生えてる雑木の葉っぱなどをこまめに集めてきては溜まったところで染める、みたいなゆるい染色だったのですが、畑まで借りて春先に植えたはずの藍の種が発芽せずに終わり、ああ、一度くらい藍で染めてみたかったと思い、この際、材料(染料)を買って来て染めようという結論に達したわけであります。

染料は、藍熊染料さんの大和藍。一応、早送りしながらざっとyouTube の解説もチラ見し、あら、水に溶くだけでいいのね、(ほかの多くの植物染めと違って)煮だしたりしなくてよくて楽なんじゃないの、せっかくだから、他の植物染料で染めたものに重ね染めするなどして、今日は実験の日にしよう!と張り切ってネタ(染められそうな服や布など)をタンスから集めてきて、あ、玉葱の皮も溜まってたからひとつは玉葱で下染めしたら緑になるんじゃない? いっぱい染めるから買ってきた藍ぜんぶ使えばいいやー、と、初めての藍染にうきうきでありました。

そして、色留め用の酢も隣に準備し、干す台もつくり、汚れてもいい服に着替え、エンボスの手袋をはめ、記録用のスマフォもポケットに入れ、ついでに音楽も流し、キッチンのシンクに置いたボールに水を張って大和藍の粉を入れました。ざっと全量。50グラム。そしてエンボスつけた手でかき回しはじめたら、これがもう、即座にものっすごい濃い色の液ができて、表面に油のように金属みたいなぎらぎら感のある紫色っぽい泡が湧いてきた。うわ、早! あわてて残量の水を入れてまたかき回すと、中の液がステンレスボールの中で中は緑、そしてその縁について空気に触れたところはまさに藍色、そして表面には紫色の金属みたいな膜ができて、そこにぶくぶくと虹色の泡が盛り上がってくる。この急激な化学変化は、今までやってきた染色とはまったく違う。早く!早くこれをなんとかしなければ! 泡とるんだっけ? なにで取る? やり始める前は、灰汁取り用の網ですくえばいいやー、と思っていたけど、こんな濃い色のぎらぎらしたやつとか、食べ物用に使ってる灰汁取り用の網で掬いたくない。仕方なくエンボスの手袋でなんとか掬い取ったものの、今度は、その掬い取ったアクみたいななにかの行き場がみつからない。そこらへんに置くわけにもいかない。だって、ものっすごい色が濃くてちょっと液が垂れただけで、あわわわわ、となるほどすぐに紺色のインクをぶちまけたようになるのである。藍の液が垂れるエンボスをもって置き場を探して右往左往したため、シンクにも調理台にも床にも濃い藍色の水滴が飛びまくり、シンクを洗い流そうとして水道を出すとその蛇口もまた藍に染まり、気が付くとエンボスの隙間から水分が侵入して私の手も藍に染まっている。やばい、明日の仕事の爪チェック(飲食関係で働いているので)が……などとあわてて手袋はずして洗い流すなどしていると、それが腕に垂れる。あ、腕が青く染まってしまった。しかし、藍もぶくぶくとしていて、これはそろそろなにか染めるものを入れなければいけないような気がする。というか、そもそもそれが今日のテーマなのである。

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そこで、今日の本命の綿の白いパンツを入れました。もしかして手織り?みたいな厚手の綿の生地で、前に古着屋で買って、でも白のパンツなんて着こなせないので、いつかなにかに染めてみたいと思っていたやつです。そしたらこれが浸した端からわーっと濃い紺色に染まっていく。生地が厚いので水分の吸収もいい。一応、前処理で水に浸してはあったので、水分吸い込むのもあっという間。うわ、どうする、もう出してもよさそうな感じ? でもまだ液がすごい余ってる、なんかもっと入れなければ、と慌ててそのパンツを出して、風呂場に用意してあった一時置きの台に運んだものの、道中、液がたれまくり、風呂場の床も壁も、そしてそれを洗い流そうとしたのでやはりシャワーの蛇口も藍に染まり、キッチンのシンクから風呂場までの動線上の床に、転々と紺色の液がぶちまけられている。わ、床が染まっちゃうよ、と雑巾を引っ張ってきて足で拭く。

もはや、染色しているといったような優雅な感じでは到底、ない。これが広い庭があったら、絶対、庭でやるべきだがそんなものはない。酢で色留めするつもりだったけど、もうめんどくさいからこのままでいいや。洗うと色がどこまでもどこまでも出てきてどこまで洗ったらいいのかわからない。これに比べればアカメガシワはかわいかった。媒染液を入れるまでは色もお茶みたいな感じで、実際に飲めるし、いい香りがするし、媒染するときにちょっと気をつければ手が染まることもなかった。しかしこの、藍の忙しさはなんだ。あまりにもスピードが速すぎる。なにもかも、すぐに染まってしまう。もうちょっとこう、浸しておくとか少しずつ媒染液入れるとか。そういう間のようなものが感じられない。ひたすら追い立てられて、液も多かっただけに、白いものだけでは足りず、家にあった淡色系の服のほとんどが、次々と藍に染まっていったのであります。もちろんそのたびに、そこから出して移動して、液を切って床を拭いて周囲を洗い流して、また手をママレモンで洗ってエンボスして……ということを繰り返し。

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2時間少しそのようなことを繰り返して、もう、呆然。疲れ果てた。そして物干しには大量の、藍色の衣料。

話に聞いた、はじめて藍が液から出て酸化して紺になっていくのをみたときの感動、みたいなのは記憶にありません。それどころではなかった。もしかしたら、明日になって乾いたものを見たら、あ、藍染やったんだ!っと実感が出てくるのかもしれませんが、本日においては、徐々に液が薄くなり、染めるものも枯渇してきて、ようやく終われると安堵したくらいです。

なお、後から気が付いたのですが、藍に対して入れる水の量を間違えていました。それでものっすごい濃い液ができたのですね。服だけではなく、床も壁もシンクも、そして私も、藍に染まった一日でした。疲れた……。


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