まちづくりのビッグデータ活用(2024/4/26 セミナーレポート)
はじめに
こんにちは!GEOTRAインターン生の持松です!
本記事では、4月26日に行われたまちづくりのビッグデータ活用に関するセミナーの内容をご紹介します。
まちづくりにおいてデータ活用が不可欠となる中、GEOTRAのデータがまちづくりとどう関わっているのか、どのように活用いただいているのかをお伝えします!
都市計画や土木交通計画における位置情報データの有用性やデータの特徴
都市で起きていることの最も基礎的な情報は「人の動き」です。
人が動くが故に経済活動は行われ、社会は機能し、社会課題も発生します。そのため「人の動き」を把握する目的で動態調査が行われてきました。
従来の手法は、国土交通省が行うアンケート調査であるパーソントリップ調査(PT調査)や道路脇での交通量調査など、人的リソースを使った手法が一般的でした。
一方で、調査工数や人手不足、また地域ごとの独自ルールの存在によるデータのオープン化の阻害等の課題があります。
他にも、ビッグデータ等の新技術の台頭や、人々の活動の多様化により、「人の動き」の把握の手法が見直されてきました。
国土交通省は、ビッグデータを活用した、「人の動き」に焦点を当てた新たな動態調査の必要性を指摘しています。
スマートフォンやカメラ等、IoTデバイスを介して蓄積される動態データをもとに分析することで、従来型調査では把握できない広範囲にまたがる移動の詳細や軌跡(トリップ)のデータが把握可能になる一方で、人流データの特徴と利用目的に応じたデータの選定を行うことが大切となります。
人が携帯する機器等を利用して計測する人流データには、基地局データとGPSデータの大きく2種類があります。
GPSデータは、測位精度やデータの取得頻度が細かく、移動手段や経路・目的分析など軌跡を追うデータ分析に有用とされています。
一方で、基地局データはデータ取得時の許諾等の観点から、一般にGPSデータよりもサンプル数が多いと言われています。
GEOTRAでは、GPSデータを利用しています。
データの利活用に許諾を頂いたauユーザーのGPS位置情報に対して、独自のプライバシー保護技術を用いることで、より信頼性が担保された高粒度な人流データを生成しています。
こうしたデータは、まちづくりや交通課題、防災など幅広い分野の社会課題解決に役立てられています。
GEOTRAの高粒度人流データの概要:合成データ生成モデルとデータの詳細
auユーザーの位置情報データが利活用出来るようになるまでのプロセスについてご説明します。
まず、携帯契約時に取得した同意に基づき、スマートフォンユーザーから属性情報・位置情報に関するデータを収集します。
次に、KDDIにて、同データに対してデータ加工や非特定化処理を行い、個人が特定出来ない形にした上で、KDDI Location Data (KLD)というODデータ(ある出発地からある到着地までの推計移動人口)が生成されます。
最後に、GEOTRAがKLDを用いて、行動パターン確率モデルから一人一人の行動データ(GEOTRA Activity Data (GAD))を生成し、移動目的・移動経路・移動手段を推定します。
GADを用いることで、一人一人のミクロな動きや、移動時間など回遊や滞留の情報、移動経路等OD・経路情報がよりクリアになり、まちづくり、交通・防災等の領域における現状分析からシミュレーション分析まで可能となりました。
GADの精度検証
また、GEOTRAでは、公的なPT調査や交通量調査のデータと比較することで、GADの精度検証も行っています。
具体的には、実測データである、PT調査や交通量調査と、あくまでも仮想のペルソナであるGADを比較し、GADが実世界の特徴量が維持されたものであるかを検証します。
精度の評価には、複数の統計手法を用いています。
例えば、2つのデータの大小関係の一致を-1から1の範囲で示す「スピアマンの順位相関係数」、2つのデータ中央値の差の一致度p値を0から1の範囲で示す「ウィルコクソンの符号順位和検定」、2つのデータ間の相対誤差の平均を示す「平均相対誤差」を用いて、再現したGADの精度を確認します。
複数の統計手法を用いた、実測データとの比較による検証を繰り返すことで、GADが現実世界の動態を高い精度で再現出来ているかを確認しています。
GEOTRAの分析事例:人流分析や予測・シミュレーション
GEOTRAでは、人流データを含む位置情報ビッグデータと、機械学習技術を掛け合わせたシミュレーション・予測モデルを構築してきました。
斯様なモデルの構築により、お客様の業務効率化や事業価値向上、また意思決定の高度化を支援しています。
まちづくりから防災まで、大手民間企業様から行政機関様まで、幅広いお客様の幅広いシミュレーションモデルに対応すべく、以下のようなモデル構築のステップを踏んでいます。
例えば、まちづくりに関するシミュレーションでは、東京都西新宿において平常時および実証実験時の人流データを用いて、実証実験やイベントの効果・滞留空間創出を予測するシミュレーションモデルを構築しました。
施設・土地立地に関するシミュレーションでは、さいたま市での病院新設に関する人流の変化を予測するシミュレーションモデルを構築しました。
また、防災に関するシミュレーションでは、建物が倒壊した際の避難経路や人数について、想定しうる交通の混乱と合わせて予測するシミュレーションモデルを構築しました。
GEOTRAは、データ粒度の細かさや、モデリングに関する知見・ノウハウを活かし、お客様のニーズに沿った幅広いシミュレーションモデルを構築することで、これからも社会課題解決に貢献してまいります。
詳細に関しては、ぜひ本セミナーのアーカイブ動画をご覧ください!
まとめ
ここまでご覧いただきありがとうございました。
本セミナーでは、まちづくりに利活用されているビッグデータの違いや、GEOTRAのデータがまちづくりとどう関わっているのかについてご紹介しました。
GEOTRAでは、独自の個人情報保護技術により、人々の動きや行動目的などが高粒度に可視化された人流データ、GEOTRA Activity Dataをご提供しています。
更に人流データのご提供に留まらず位置情報データ全般に関する利活用促進のためのご支援を行っております。
noteでは、引き続きGEOTRAの事例紹介や活動報告、GEOTRAに関連するテーマの特集や事例研究を掲載していきます。
今後も皆様のお役に立てるコンテンツを配信できればと思っておりますので、皆様のいいね・フォローをお待ちしています!