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Audible『成瀬は天下をとりに行く』、今の時代に本屋大賞をとる理由は

本屋大賞候補になった頃から店頭に並んでいるものが気になっており、audibleになった途端に聞きました。

最初の西部女子の話は、わかりやすくおもしろい。
次からは登場人物や視点が変わっていって、???となった。文字でなくAudibleだから何か聞き飛ばしたのかもと心配になった。がオムニバス的につながっていくものだと気づいて一安心。

自分がだいじ、やってみよう、ということを突き詰める。
それが他者から見たらけったいなことであっても、そんなの知らん。
でも、違う・一定やって満足できたら、途中で方向転換する。
こういうあり方は「一貫性がない」と非難されるやつ。

聴き進めるうちに、「成瀬って大丈夫な子?」と心配になってくる。
空気や場の空気を読むということはしない、そういう概念がない。
が、友人に違うと言われればそれを受け止めて反応することはできる。
あまりにもストレートでまっすぐで、
だけど他の人の物語や期待に乗るということはしない。
そういうことは行動原理にない。

成瀬の直接間接に関わってくる人たちの心の動きのほうが共感しやすい。
主人公の成瀬自体には感情移入しにくい。
だけど、主人公は成瀬なのだ。

これが本屋大賞になる、ということは多くの本好きの心をゆさぶったのだ。成瀬になれない・ならない、
その周りでこころををゆらゆらしている人たち。
いまの高度に空気を読まなくてはならない世界のなかで、違う体験をできる本。




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