見出し画像

定点カメラ#30 映画館からの帰り道

「以上をもちまして、映画『キャンバス』上映会を終了とさせていただきます」

定点カメラ#28は、上映会で皆さんに配布したチラシに、#29はパンフレットに忍ばせてみました。ということで前回の#27から1か月、久しぶりにカメラを覗いてみました。

今回の定点カメラでは、東京、京都、大阪の3会場で行われた上映会の様子を、皆さんにお伝えします。


2023年2月20日
「明日、122人もの人にキャンバスが届くんだね。観て何を思うんだろう」
「届いてよかったな~って思える人が1人でもいたら、きっと自分たちの1年には価値があったよ」

上映会前日にもなると、もう胸を張って次の太陽が昇るのを待つしかない。自分たちがつくった『キャンバス』が良い映画かどうか、それは明日わかる。はず。

2023年2月21日
8時30分、下北沢駅東口集合。自主制作映画の聖地とも言われる下北沢トリウッドまで、青空の下を真っすぐ歩く。地に足が着かない感覚。予約してくれた122人は本当に観に来てくれるんだろうか。始まってみれば誰も来なかった、なんて不吉な想像もしてしまう。実際に黄色い椅子に人が座るのをこの目で見るまでは、安心することができない。恐ろしや。

5公演、123人。

シアターから出てくる人たちの顔は、曇っていたり晴れていたり。「ちょっと難しかったです!」と素直に伝えてくれるのも嬉しいし、何かを考えながら帰っていくのを見るのも嬉しい。他人の顔ばかりうかがっているけど、自分たちにとっても、映画館で上映される初めての『キャンバス』。撮影期間の暑さが思い出されて、無事にエンドクレジットまでたどり着くと、やっぱり感動するものです。

定点カメラやインスタグラムで発信していた『キャンバス』に込めた思いを、上映後、実際に言葉にして皆さんに聞いていただけたことも、とても嬉しかった。

下北沢トリウッドまで『キャンバス』を見に来てくださった皆さま、本当にありがとうございました。

2023年3月4日

この日、アップリンク京都では、不思議なまとまりを感じました。観に来てくれている人も一緒にその空間をつくっているような気がしたんです。私たちの本拠地が京都ということもあり、最初から応援してくれていた人、クラウドファンディングで支援をしてくれた人が多かったというのも影響しているでしょう。もしくは、映画館の構造の問題もあるかもしれません。他の上映回が良くなかったなんて言ってませんよ。でも確かに、あの空間は”私たち”がつくり上げていました。

何を言っているんだ。と思われるかもしれませんが、3会場で観た9個の『キャンバス』は、全て違う映画に感じたんです。まるで生きているようですね。

「やっぱり映画が好きだなぁというのを、すごく、この映画を通して教えてもらったし、改めていろいろな感情と出会いました」

1公演、22人。

アップリンク京都まで『キャンバス』を見に来てくださった皆さま、本当にありがとうございました。

2023年3月11日

下北沢トリウッドでの上映はまだ寒くて、ダウンジャケットを着ていたのですが、それから2週間以上経ち、外出には寒さよりも花粉症の対策が必要になりました。あぁ、いつのまに。鴨川沿いのベンチでお昼寝をしている人もちらほら。

モエコが書いた「監督観測記」なるものがもう少しで完売だと聞いてびっくりしつつ、みんな『キャンバス』に興味を持ってくれているんだなぁと嬉しくなりました。

この日の朝は、今日が上映会最終日だなんてことは全く感じられず、ぽけーっとマクドナルドのエッグチーズバーガーを食べながら準備をします。開場の時間が来て、エレベーターが開いて、お客さんが受け付けをしに自分たちのところまで歩いてくる。2週間前は本当に席が埋まるのかびくびくしていたのに。初心を忘れてはいけませんね。

20時 最後の上映 アフタートーク
「自分にとって、とても大切な作品になったし、粗削りですけど、この作品がとても好きなので、これからもずっと寄り添っていきたいです」

「主演に愛される映画って、良い映画だよね」

3公演、103人。

シアターセブンまで『キャンバス』を見に来てくださった皆さま、本当にありがとうございました。


ほとんどの人は素通りしても、250人のうち何人かが、ふと立ち止まって振り返る。そんな映画になったんじゃないかと思います。

届いてよかったな~

映画館からの帰り道、阪急電車に揺られながら思いました。寂しいけど、案外未来につながるフレーズなのかもしれない。

「以上をもちまして、映画『キャンバス』上映会を終了とさせていただきます」

文責:あきら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?