定点カメラ#2 脚本とチーム
定点カメラ2本目。自主制作映画1本ができるまでの道のりを、自分たちで定点観測しようという試み。
前回の定点カメラでは、最初に立てた年間計画を記載している。のだけれど、すでに大きく遅れている。
4月10日の始動から約1か月。我々のチームは動き始めたように見えていた。毎日メンバー持ち回りでnoteを更新していたし、そこに現れる各人の「映画作りに参加したい」という気持ちは、ウソとは思えないものだった。
しかし、危惧を覚えている人が1人いた。監督である。
「チームとして」という言葉を、監督は毎晩使った。
「いい作品はいいチームから生まれるし、みんなの魅力をなるべく映画に出し切りたいと思っている」
いいチームとは。
立ち止まって考えてみると、我々はメンバーのことを全然知らないじゃないか。筆者はメンバーの呼称ひとつさえ定まらず、ふわふわした状態でzoomに参加していた。
そんな状況を脱却すべく「交流会」がセッティングされた。
5月2日、結局話したのは「『2001年 宇宙の旅』が素晴らしい理由」とか「鴨川で好きな場所」とかそういうことだったけれど、多分こういうのが大事だった。
さて、脚本はと言うと、、、
”全然進まない”
書いては消し、書いては消しを繰り返す脚本作り。当初は監督とあるメンバーの2人で書き上げる予定だった。しかし彼は、物語を考える労力をこの映画制作のために使うことに疑問を感じていたのだと思う。
うん、しょうがない。もちろんそれを責めることはできない。
というわけで、全員で相談をしながら進めるという形になった。根幹となる骨組みは監督が生み出す。
すでに2本のプロットが完全白紙に戻った。監督が1人で書き、メンバーに共有していないものも含めると、消えたプロットは既に30本を超えている。
誰かのために作る映画じゃない。自分たちのために作る。
膨大な時間をかけ、他人に盛大に迷惑をかけ、身銭を切って作る。映画を作るなんてことに時間を捧げられるのは、これが最後かもしれない。
だからこそ脚本は自分が心から納得できるものじゃないといけない。監督はパソコンの前で動かない自分の両手に苛立ち、焦っていた。時には脚本が前に進んだと思える瞬間も訪れる。1cmだけ、1mmだけ、いや、0.5mmだけ。
監督が思いついたことを話し、他のメンバーが「それってこういうこと?」「だったら、、、」とあれこれ言う。
固まったものがほどけて、広がって、結ばれていく。そういう瞬間が、ごく稀に訪れる。
その時の監督の表情がすごく好きだ。「21歳でもこんなにピュアな表情ができるのか」と思うほど、何のリミッターに縛られることもなく、シンプルに幸せそうだ。
そういう監督だからこそ、誰よりも傷つく。
進まない脚本以上に、監督を悩ませ、苦しませていたのは、一緒に映画を作ろうとしている私たちメンバーだった。
文責:あきら・もえこ
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