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【画廊探訪 No.125】私とあなたが手をつないで共に動くホールで――Gallery Face to Faceグループ展『LIFE LINE』                 山本清出品作品に寄せて―――

私とあなたが手をつないで共に動くホールで
―――Gallery Face to Face 新春企画、グループ展『LIFE LINE』
                 山本清出品作品に寄せて―――

襾漫敏彦

『LIFE LINE』、フェイス トウ フェイスの新春企画、三十八人の作家によるグループ展が開催された。パート2では、フェイス トウ フェイスのオーナーである山本清氏も新進作家の一人として参加された。

 山本氏は、ここ数年の新型コロナウイルスの流行による混乱を背景として、生活を支える生命をつなぎとめるものを考え、「LIFE LINE」、命綱というテーマで新春グループ展を企画した。
 「LIFE LINE」の題目を意匠として、三十八名のアーティストが、技術の上にひとりひとりの思考と感覚を乗せて、作品を発表した。山本氏も、彼らにまじわって、三つの写真を出品した。


 「送る視線」「返される視線」「おぼろげな視線」とそれぞれ題された三葉の写真は、日常の中で、逍遥しつつ撮影した物語を感じさせる。
 「送る視線」は、ふと見上げた風景を写真におさめている。「返される視線」は、動物の造形が設置された公園のような空地の一枚であるが、動物の像の眼差しを感じてカメラを向けたのだろう。「おぼろげな視線」には、倉庫や駐車場のような太い石柱で支えられただだっ広い空間が、曖昧な光の下、ぼんやりと映っている。ストレートでありながらも、姿勢をくずさぬ表現には、精神における“肉体的力量”という修辞をあてたくなる。
 画廊を維持すること、それは自分の意志を空間の底に通すことである。展示の前、彼は作品に視線を送る。そして、人が出払い一人、とり残されたとき、折として表現体の持つ視線に気づく。主客の視線が行き交うが、ふと自分に戻るときがある。それは何ともいいようのない“ぼんやり”した時間である。線がいきかひ、ふと消える。それでも崩れぬ姿勢が、精神の肉体を健全に保つのかもしれない。


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