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【画廊探訪 No.039】風に吹かれる大地の色彩――遠藤萌展に寄せて――

風に吹かれる大地の色彩
――『遠藤萌展』(MEGUMI ENDO Solo Exhibition)
(JINEN GALLERY)に寄せて――
襾漫敏彦
 妙正寺川が流れる中井の辺りは、かつては染物でにぎわっていた地域である。鮮やかな色に染めた後、川の水に晒された布は、何枚も何枚も、しわを広げて干されていく。風にあてては、所々でピンと張りながら、布の間をゆきかう職人の姿は、ひとつひとつの色が織りなすグラディエーションと重なりながら、遠い思い出の中の景色となっていく。

 遠藤萌氏は、木版画家である。水彩の絵具を版木に施して、さらりとしてあわさの色彩を大気のように重ねていく。水に溶いて粘土を下げたインクをのせた版木を優しく刷っていくのだろうか、刷毛で描いたかのような描線が、かすれた抜きとなって表れてくる。その軽さは、自然の色彩の大気の間を、柔らかく抜けていく風のようでもある。

 遠藤氏の刷りの文体は、上流から川によって運ばれてきた巨石の表面のように、どこか、ざらついている。深くはないが、確かな痕跡は、ここに至るまでの自然の日記の一葉なのである。彼女は湿り気を含んだ大気の肌に残った触感を、自然との会話として、色彩と刷りにおとして重ね合わせていく。そして、自然の記憶である風景を表現していくのだ。

 山間の古い民家に独り佇むとき風の音が、人の訪れのように聞こえてくる。夕刻に近づく遅い昼間、少し陽がかげって暗くなった部屋の中で想念が重なってゆく。一日の小さな発見は、イメージのフレームが版木の上で重ねられていくように、肉体と魂の中に降り積もっていく。一日が終わるとき、その日を思い返すように、自然の記憶は、風景として思い返されるのだろう。

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【画廊探訪 No.032】の石井陽菜さんと一緒に個展をやられていました。その時のJINENの紹介を添付しておきます。



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