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【画廊探訪 No.106】紫雲に浮かぶ「存在」の首 ―――「ULTRA006 」nov.side森谷鶴児監修 有村崇伸出展作品に寄せて―――

紫雲に浮かぶ「存在」の首
―――「ULTRA006 」nov.side森谷鶴児監修 有村崇伸出展作品に寄せて―――
襾漫敏彦
 年季のはいったホテルに足をふみいれると、不思議な装飾や照明に出くわすことがある。埃を少しかぶっていて、使われているのか、はっきりしないが、その浮きあがったような存在は妙に懐かしくもある。

 有村崇伸氏は、九州の南の地、鹿児島の画家である。彼は奇妙な絵を描く。彼が描くのは、浮かびあがった首である。そして、それは単調な背景の中フックのような帯状のものの先に出現しているのである。話だけではおどろおどろしい猟奇的な作風に聞こえようが、そういう類のものではない。もう少し淡白なのである。

 彼は、虚飾を排除していく。余計なものを限りなく落とした表現は、焼き物に通じるようでもある。また、それは、ポツポツと家屋が点在する田舎の道のようでもある。

 修飾というのは、もともと飾るための意図を含んでいる。どうみられたいのかという周囲への従属があるのである。有村氏が削っていったのは、そういう意図である。首には、表情すらないのである。そして、残っているのは、「存在」なのであろう。

 鹿児島といえば、桜島である。そして多くの画家が、桜島を描いた。しかし、その麓には、生活の「存在」があるのである。かけねなしの過去からの連続、それがの「存在」である。その清潔さ故にこそ、紫雲の果てに「存在」であるだけの首が浮かびあがるのであろう。

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