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【画廊探訪 No.155】大世界は、その日、蒔かれてはじまった――イワタマユコ・Suisui ・畠中彩三人展『season』Gallery Field企画、Suisui出品作品に寄せて―――

大世界は、その日、蒔かれてはじまった
――イワタマユコ・Suisui ・畠中彩三人展『season』Gallery Field企画、Suisui出品作品に寄せて―――


襾漫敏彦

 毛布に羽毛、それにキルトのベットカバー、ふかふかなベットには幾重にも布団がかけれれている。そこに体を投げだせば、緑の草原のように深く、柔らかい。ナチュラルな情感は広く生命の大地へと、温かく広がっていく。

 Suisuiは、岩絵具をベースとして、色の粒子を油脂でないもので包んだ具材を重ねて作品を制作する。彼女は、いくつかの画像の層を重ねあわせることで、立体的な厚みを持つ作品を成り立たせる。 
 ベースである支持体に岩絵具やアクリルで下絵を描き、その上に版画の技法で装飾を加えた土佐典具帖紙を貼りつけていく。その上に、再度、岩絵具やソフトパステルで描き加えていく。
 それは刺繍を重ねた厚い布地のように凹凸を感じさせ、それが前と後ろの距離感を醸し出す。それは平面空間に組み上げた立体作品であり、ヨーロッパのキルト工芸や天寿国繍帳の力強さにも通じよう。画布に描き集められた動物と植物、そして生命の気の重ねあわせは大自然から切り出された一葉のタブローかもしれない。


 今回、彼女は「season」を「種を蒔く」と読んで野焼きで作成した狗の頭部を出品した。天狗とは、轟音をたてて流れ堕ちる隕石を吠えさかる狗に喩えたものである。隕石は、破壊をもたらす、けれども、それは多くの生命を生みだすきっかけ――種――かもしれない。

 きっかけは、世界から、いまとここを切り出すように思える。けれども、いま、ここから世界は広がる。疲れてベットに体をなげだしたとき、そこから明日は始まる。
 天狗から生命を分け与えられた彼女のタペストリは大世界の模写ではない。大世界はこの一枚からはじまるのだ。

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Suisuiさんのサイトです。

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