見出し画像

【画廊探訪 No.040】物と記憶に埋もれた過去を掘り進んで ――風見規文作品に寄せて

物と記憶に埋もれた過去を掘り進んで
――『ULTRA006 』 ギャラリー二イク 風見規文出展『壁画』に寄せて―――
襾漫敏彦
 
 石の蓋があけられて、闇が破られるとき、凍結していた時が動きはじめる。多くの遺物と共に、壁に描かれた絵が人目に触れる。これを「発掘」というのであろう。長い年月を越えられない壁として、ひき離されていたものが出会う。発掘も、一つになろうとするコミュニケーションの一種なのであろう。

 風見規文氏は、本来、発掘画家である。彼は木枠に張った画布の上に砂や石灰をこねて塗り、壁をつくる。顔料も膠質で練り、絵具をこしらえる。文明に毒されていない子供が遊ぶように、壁の上に絵を描く。そして、その上に時間のフェイクを施していく。

 彼は、この作画を「発掘」と呼ぶ。それは、人が絵を描く始原と交わろうとする作業なのであろうか。幼少の頃、彼の身のまわりには多くの漆喰の壁があった。その彼が、壁をつくり絵を描くことは、物と記憶への風見規文の執着を道標として、意識の底に埋もれてある風見規文のまだ見ぬ遺跡へと掘り進むことなのであろう。

 原始の昔より、人は自分が何者であるのか、どうしても知ろうとするのである。そのために、記録を読み、自画像を描き続ける。そして文明の進歩は、人類の本来の有り様を失わせていった。だからこそ彼は、自分の本来の姿を求めて「発掘」を続けるのであろう。それが無謀だとわかっていても懲りないのである。人は朗らかなくらい十分愚かなのである。

***

風見さんのウィキペディアのページです

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E8%A6%8B%E8%A6%8F%E6%96%87


 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?