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【画廊探訪 No.133】苦しむ世界を癒そうとして――「tagboat Art Fair2022」OUMA出品作品に寄せて――

苦しむ世界を癒そうとして
――「tagboat Art Fair2022」OUMA出品作品に寄せて――
襾漫敏彦
 細胞には色彩はない。葉緑素や色素を含むものもあるが、顕微鏡の写真のように色鮮やかに見える写真は、さまざまな方法で色づけしたものである。人為的な方法で視覚的に区分けしたものに、我々は名前をつけ、その意味を考えてきた。
 生命、それは相互に与え合いながら、巡り巡る。そして、そこに現れた統一体である。OUMAは、獣医師として、獣医学のフレームの中で治療に携わり、生体、組織、細胞と向かい合ってきた。彼女は、ある患者の死と向き合ったとき、己を支えるフレームが崩れ、世界の色彩が一瞬でも信じられなくなったのか、自分、生命、世界の意味を考え直す。あたらしく見えはじめた世界の理解を表現するために彼女はアートの深淵へと跳躍する。

 OUMAは、流れ動く色彩をベースとして描く。そして、その上に個別の個性を語るように細胞の姿を描いていく。それは集団の中から、生をもつものひとつひとつの輝きを見いだすような作業である。個別の集まりとなった集団の中に、彼女は様々な文化の言語を書き加えていく。
 OUMAは、死に直面して医療の意味を考え直した。生けるものの病を治療するのでなく、病を得て苦しむものを包む環境や世界を癒すべきだと。かくして彼女は、世界の中で恵まれぬ不幸なものでなく、不運なものを生み出した世界そのものの不幸に対峙することになった。
 細胞に色彩はない。細胞をとりまく細胞の集まりにも色彩はない。けれども、意味は、ひとつひとつにはある。世界に対して、治療という染色をOUMAが施したとき、新しい色彩が生まれた。ひとつひとつの細胞が手をつなぎあった世界にも新しい意味が生まれる。別々にあっても、分断されていても、互いの意味が支えあって世界は豊かな色彩に輝く。

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OUMAさんは、Instagramとか、noteをやっていますが、いろいろなインタビューを受けています。

OUMAで、自分で調べてみてください。いろいろでてきますよ。

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