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【画廊探訪 No.146】森に生きる現代のグリーンマン ――金野成哲作品に寄せて――
森に生きる現代のグリーンマン
――羅針盤セレクション6人展 金野成哲出品作品に寄せて――
襾漫敏彦
大いなる自然、大樹や大地、流れる水の傍に腰を下ろして佇むとき、体の中に浸みこんで来るような何かを感じることがあるだろう。包まれるような、抱かれるような。気づけば、その中に溶けていくような。
人は集まって社会をつくるものだといわれる。本当にそうなのだろうか。むしろ、森や自然の中で、ひとり育まれて生きるべき存在なのかもしれない。
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金野成鉄は、自然と交わる人間を描こうとする油彩の画家である。彼は油絵具を使いながら、土地から拾いあげたままの鉱物のような色彩で絵を描く。油独特の光沢を抑制したマットな色調で描かれたそれは、洞窟や岩に描いた絵のようである。
何故、光沢をおさえるのか、それは、金野にとって自然が自分に迫ってくる他者ではないからだろう。彼は、自然を客体としては描いていない。自然を融合していくような彼の絵は、主観的な風景画でもない。強いて言うならば、本来あるはずの自画像なのだろう。だから、輝きは余計なのだ。
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人間と自然の愛和は、太古よりつながる人間本来の在り方なのである。そして、人々はそのことを様々な形で残している。カサリン・バスフォードは、中世ヨーロッパの教会建築の中にその姿を認め、“グリーンマン”と名付けた。岩手出身の画家の阿伊染徳美氏は、日本、そしてアジアにおける“グリーンマン”を追いもとめていった。お稲荷さんや、狛犬、そして沖縄のシーサー、そして同郷の先人、宮沢賢治に“グリーンマン”の姿を認め、古事記のオホゲツヒメを“グリーンマン”と読んで美しい作品を残した。
体の奥から聞こえる太古からの人間と自然の愛和の声にまた一人の画家が気づきはじめているのかもしれない。
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