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【画廊探訪 No.078】存在をつなげて結びつく生命の輝き ――art Gallery OPPO『ZUVALANGA』展に寄せて――

存在をつなげて結びつく生命の輝き
―――art Gallery OPPO『ZUVALANGA』展に寄せて――
襾漫敏彦
 
 伝統という言葉の「統」というのは、成り立ちを訪ねると、多くの糸を縒り集めて紡錘上に膨れた形を意味するらしい。
 私を美術に誘った美術評論家の鷹見明彦氏は二〇一一年の震災の後、病で亡くなった。それから、七年の月日が過ぎた。あの時以来、多くのものをつなげていた何かが、切断された。回復したかもしれない、そのままかもしれない。何を失い、何かを得たのだろうか。戦後は終わったというように、上から言われる日もくるかもしれない。けれども、全ては、なかったことにはならない。
 <ZUVALANGA>は、強いワイヤーで結びついた男女二人のアートグループである。二人は震災の年の二〇一一年から一三年まで、南アフリカに滞在し、その地で伝統のビーズ文化とワイヤーアートの融合したワイヤー&ビーズアートと出会いその魅力にひきつけられ、技を学び帰国した。二人は、ワイヤーとビーズを使って、大自然で共に生きた動物たちの生命を紡ぎだす。
 ワイヤーで、大きくフレームを造り、それを手がかりにビーズを通したワイヤーをかけていく。表面を形づくるビーズの線の流れは、動き、姿勢、気息、生命の微細な躍動をも表現している。
 震災、戦禍、災害、大きな災厄は、生命のつながりをバラバラにする。そして、ひとつひとつの存在の内には、その悲しき記憶が残されている。伝統の「伝」の字は、包みの中にいれたものを人が持つ形象に由来するらしい。ビーズというものも、人と同じく、小さな、そして確かな存在の証であるのかもしれない。
 生きとし生けるものは、太陽の下、自然の中で離散しても結びつく。上を見ると暗くなる時代、アフリカで大地を見たように、真直ぐに生命と出会った体験をたずさえて、<ZUVALANGA>は新しいワイヤーとしてこの地に戻ってきたのだろう。

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<ZUVALANGA>のウェブサイトです


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