見出し画像

【画廊探訪 No.097】我は我たり、君は君たり ―――「ULTRA006 」nov.side森谷鶴児監修 阪本勇出展作品に寄せて―――

我は我たり、君は君たり
―――「ULTRA006 」nov.side森谷鶴児監修 阪本勇出展作品に寄せて―――
襾漫敏彦

 まだ、日本という国が、人というものを信じることが普通であった幼少の頃、大人達の作業場にまぎれ込んでは遊んでいた記憶がある。そこに落ちてあった木片やパイプの切り端、物のは、本当に宝物であった。それぞれが、まだ輝ける存在であり、お互いをないがしろにすることは普通でなかったように思う。

 阪本勇氏は、ガムテープやビニールテープといった厚みのあるカラーテープを使って作品を構築する。木や厚紙の板をテープで巻いたり貼りつけて色の調子をとっていく。その行為は、全体を分解していく作業でなく、投げ置かれたままの断片の存在の厚みを確認する行程のようでもある。
 
 今回の作品は、畳一枚程のキャンパスにカラーテープで描いた二枚組のタブローである。横に様々な色のカラーテープを何十層にも貼りつけていく。幾列もの路線の上に、小さく切ったカラーテープを使って一つ一つの存在を重ねていく。それは、幾重にも並列させたハイウェイの連なりのようでもある。
 阪本氏の面白いのは、これだけ階層的な構築にもかかわらず、上から下、もしくは横への延展といった人が生体感覚をもとに空間に於いて通常感じる重層感、重力感といった場の支配感がないのである。それは、拾った木片を宝物のように扱う如く天地をひっくり返したり回転させたりして遊ぶように普段からしているからだろう。思うに、彼は画家というより造形作家に近いのかもしれない。
 
 彼の表現は、天上の宮殿から眺める下界の表現にはそぐわない。天才でなく天然である。彼は神を知らず、一つ一つの被造物と共にある。古い言葉を引用すれば、「目的意識」でなく「自然成長」の作家である。

***

「ULTRA006 」は、震災後のアートフェアでしたので、結構、弾けた表現が多い頃でした。森谷鶴児さんのブースは特にそうでした。

 パーフォーマンスを兼ねて行動しているようですが、これがというサイトはみあたらないのと画像がありませんが、探してみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?