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展示感想:〈ネガ、そしてポジ〉竹渕愛留萌展 「もしも全てが幻だったら」Gallery Face to Face

竹渕愛留萌展 「もしも全てが幻だったら」行ってきました。今回は、制作環境の都合もあり、水彩によるドローイングが中心でした。

 彼女は、個展の前にイギリスに旅行に行かれたようですが、そのときに手に入れた紙を支持体として使ってました。スケッチブックの紙に比べると割と硬めのどこか、壁紙のような厚みを感じました。

 少し青みを感じるモノトーンのメゾチントと違い水彩による彩色がなされています。


 全体的には、青系を基調として、赤が混じり合う感じですが、寒く深い夜のなかに、着込んで丸まりながら求める温もりに通じるような印象があります。並木のもとで散り落ちた落葉のようにも思えます。

 

 これは、これまでの銅版の作品です。

 今回の水彩画は、いつもの竹渕さんの作品の裏側、作品を生み出す思索が現れているようにも思います。冬の夜の白い吐息、それがメゾチントの作品の情感だとしたら、今回の水彩画は、体の温もりを残したまま肺胞から集められる呼気のような感じがします。

 水彩画が、思考のポジだとしたら、吐息である銅版画は、ネガとでもいうべき対称を示しているようです。幻の向こうに実はあるかもしれない実体、そんな手がかりを感じさせてくれるような感じです。

 様々な思考、思索、そして試行、そういうものが分け解けられて、ひとつの樹木へと形を変えていくそんな思いに駆られます。

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