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【画廊探訪 No.085】僕は分かたれて、いま、ここにいる。 ―――Gallery b. Tokyo 與那覇健志個展『みわたし』に寄せて―――

僕は分かたれて、いま、ここにいる。
―――Gallery b. Tokyo 與那覇健志個展『みわたし』に寄せて―――
襾漫敏彦
 強い直射日光に照らされると、色は主張を失っていく。差異は暗がりの中でこそあらわれる。南国のものは白い。しかし、あからさまに見える直射日光の世界では、むしろ物の存在そのものが、強く強調される。

 與那覇健志氏は、油彩の具象画家である。彼は静物画のように物が置かれた具体的な光景を基にして、そのままの構図をキャンパスに描く。それぞれの輪郭を大枠とした領域を平板な色調で区分けしていく。それは大きなピースで組まれたパズルのようだ。色調は陰影に乏しい明快な薄い色合いであるが、塗りの質感は、油絵具のもつ独特な光沢だったり、水彩の乾いた感じ、更には砂絵のような粒のザラツキと明確にわけられている。それが領域の自立感を一層引立てている。

 與那覇氏は、関東で生まれるが、沖縄の系譜をひく。幼少の頃は、父の郷里の沖縄で過ごすことも多かったと聞く。島が連なる里での記憶は、自分の部分(パーツ)が、離れた所にもあることを意識させるのであろう。

 島嶼というのは、本島という中央のみでアイデンティティを支えているのではない。すべては離れて点在し、それが空間を形成する。島と島の間の海、そこにも人の営みがある。どこか欠けること、ないものとされること、それは空間がえぐりとられること。バラバラにピースを塗りわける手法は、島の向こうにまた島があることを考えた想い出に通じているのかもしれない。

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Gallery Qで行われていた展覧会の画像がユーチューブにあがっていましたので、URLを添付しておきます。ツイッターもやられているようです。



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