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【画廊探訪 No.107】木の中に埋もれた蛹が開くとき ―――「ULTRA006 」nov.side 藤田朋一出展作品に寄せて―――

木の中に埋もれた蛹が開くとき
―――「ULTRA006 」nov.side 藤田朋一出展作品に寄せて―――
襾漫敏彦
 
 木材というものはしなる。そして息をする。それは硬いものでもあるが、柔らかいものでもある。このクニの人は、永いこと木材と語り問いかけてきた。そして鉋をかけ、組み上げながら、意味を変え続けてきたのである。

 藤田朋一氏は、木工造形家である。彼は細く仕上げられた角材を組あげて造形をつくる。魚や、海老大将といった魂をもつ木製の生命体を好んで作る。それは、どこか懐かしく、江戸時代よりの伝統工芸やからくり細工を思わせる。

 今回の彼の作品は、拘束された蝶である。木材で組み上げられた蝶が、栄養を与えられながら、拘束されている。それが黒い円盤――世界であろうが――の上に、回転するように対称的に配列されているのである。

 これまで、作家は、木材を使って想像的な知的生命体をつくってきた。木組みで作られたそれは、殻とでもいうべき外骨格で支えられる生命体であった。外からの支持、それは秩序であり、法であり、システムなのである。しかし、木を組むことそれ自体が秩序なのである。
 そういう方程式のようなあり方は、彼の作品の随所に認められる。彼は、その必要を説く。しかし外側から支えられている内部は、柔らかくかよわいものなのである。そして、それを知るのも作者自身なのである。

 今回の生命体は蝶である。そして拘束しているものが秩序である。だから外骨格は存在しない。おそらく彼は、外骨格を反転させて内側の世界を表現しはじめたのであろう。難しい所である。しかし、外部に支えられない表現が羽化する時期になっているのかもしれない。


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C-DEPOTの藤田さんの紹介です

ブレイク前夜も添付しておきます



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