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【画廊探訪 No.014】フレームに載せた回転木馬――ツナミカン個展に寄せて――

フレームに載せた回転木馬    

       ―――ツナミカン個展に寄せて―――
                             襾漫敏彦
 阿佐ヶ谷の洒落れたカレー屋の前で、一個の女の子が、個展のチラシを配っていた。カレー屋”Tsubaki”で開いた個展で、作者自身が、立っていた。まあ、そういう姿に誘われて、あろう事か、五十も間近なオッサンが、キュートなイラストの世界に迷い込んだ。
 パステルと水彩を巧みに使った表現である。立体の意識がない分安定を崩す事なく、水平の面にイメージをプレスしたような感じである。あえていえば、砂絵に近い印象をうける。手探りに少し色を引き算して眺めてみた。フレーム、そして軸になる色。彼女と作品をつなぐ一本の柱が、そこにあるのだろう。そこから、色を抜くのか、足すのか、時を置いて選ぶ。そして、最後にフレームの響きをしみのように付ける。
 加うるに、もう一つ面白かったのは、四字熟語の流れを使ったミニ絵本である。言葉の選択が偶然だろうが、妙に古めかしい。こちらを向かぬ子供の勝手な表情が、割と良い。概してこの人の絵は、意図の無い方が顔が生きている。
 服を決め、髪を整え、一本立てて、飾りつける。表情を隠しながら、描く作品の中には、西方から流れ込んだ彩色された砂のかけらが潜んでいるのかもしれない。

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このかたは、似顔絵をやっています。美術評論をはじめた時、ばったり道であってひきこまれた感じでしたが、この子との出会いで、いわゆる、まっとうな絵画の評論を考えていた自分の枠が壊れたとのかな。

それから、領域にこだわらず、出会ったアーティストに評論をかくことになっていきました。

彼女との出会いは、振り返れば、重要な分岐点でした。


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