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コミュニケーションの極意|「反応がない」から気づいた子ども目線
わたしは言語聴覚士という、ことばやコミュニケーションのリハビリをする仕事をしています。
この仕事を通して学ぶ、コミュニケーションの奥深さと偉大さに感謝をしています。
知らなかったコミュニケーションの極意
わたしが学生時代の頃の話。
言語聴覚士の養成校では、臨床実習があります。
病院や施設の療育の場面で、お子さまの様子を見せていただき、療育計画・支援内容を考え、実施するものです。
実習には担当のバイザーがつきます。バイザーは指導者のことです。
当時わたしは20歳。それまで子どもさんと関わることなんてほとんどなく、まして発達に困っている子どもさんと一緒に遊ぶ、という経験はありませんでした。
その実習でことばがでないお子さんに出会いました。
わたしがそのお子さんに何をしても反応がありません。厳密には「反応がない」と勝手にわたしが思い込んでいたのです。
お子さんの療育計画を立てるという実習なのですが、本当に難しく感じていました。
そんな時、バイザーがわたしに教えてくれたことばがあります。
「反応がないという反応をしてくれているんだよ」
ことばがでない。表情の変化もない。発声もない。
これらの反応こそが、この子が発している反応なんだと。
当時のわたしは衝撃を受けました。
「反応がないという反応がある」という考え方は、理解できるようで中々できませんでした。
どうして反応がないんだろう?
どうすれば理解をしてあげられるだろう?
わたしが知識をつけることで、子どもさんの力になれることが少しでもあるんじゃないか。
バイザーからの教えをきっかけに、脳のしくみや子どもの発達や心のことを深く学んでいきました。
反応には理由がある。たとえ反応がなくても。
ことばをうまく使えない子どもさんから学ぶことは多々ありました。
バイザーが子どもさんに向ける視線、態度、身振り、表情などを拝見し、人が使う「ことば」以外でコミュニケーションができるスキルの高さを目の当たりにしました。
子ども目線の子育て
学生時代の実習を経て、言語聴覚士として仕事をしてからも子どものことばと心の発達の療育に携わってきました。
その時期に、わたしも子育てをしていました。
「反応がない」ことにさえ理由がある。
子育て中の子どもは反応だらけ。
次々に反応を見せてくれる子どもに感謝をしつつ、子ども目線で関わる事の楽しさやコツをつかんでいきました。
「子ども目線」というのが本当に難しい。子どもを知るには子どもの発達を知る必要があります。
仕事をしながらの子育てでは、時間に余裕がありません。
子どもからの「反応」を見逃してしまわないように、わたし自身の心の余裕が必要でした。
子どもの発達を学んだことで、貴重な子どもからの「反応」をプレゼントだと思え、忙しさの中に楽しさを見つけることができました。
無反応を大切にする
2人以上いると、コミュニケーションが始まります。
誰かといる時は、わたしはなるべく相手の反応を待つようにして、観察するようにしています。
「反応がないという反応がある」ことを知ってから、無反応という反応は、コミュニケーションを扱う仕事をするわたしにとって、とても大切にしていかないといけないことだと思っています。
相手から反応を受け取れるということは、とても感謝をすることです。
楽しみながら、呼応する。
じっくり相手を見ていると、色んな反応があるのでとても楽しい!
無反応はコミュニケーションの始まりかもしれません。
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