#40 過去の記録や記憶

昨日は春の陽気で、家の中より外に出た方が暖かかったな。
ただ、まあ今日はずっと冷たい風でさ。
いつものマラソントレーニングも、軽めにしといたよ。

・・

お、そうだな。
そろそろ3月11日だ。
今年で11年目か。

■ 契りきな かたみに袖をしぼりつつ 末の松山 波こさじとは

清少納言の父親、清原の元輔の歌だ。

かたみに、つまり互いに涙を流しつつ約束したよね。あの貞観地震の津波であっても、「末の松山」を越さなかったように、どんなつらいことも乗り越えていこうと。

貞観地震って、平安時代の初めに東北で起きた地震で、3.11のように津波被害もあったと記録が残っている。

遠く、平安京の京都にいた人々にとっても、地震や津波、「末の松山」のことは常識だったんだ。
それをモチーフに元輔が恋の歌にした。

3.11の時、もちろん、オレもさまざまなこと考えた。
で、ある本で知ったことなんだが、当時、秋篠宮殿下はある対談で、この元輔の歌を引いてコメントされていた。
オレは、はっとしたんだよ。
古典の中に、過去の記録や記憶があり、それを読み、知っておくことが大事だってこと。

・・なんでかっていうとさ。
ずっと地震が起きる起きるって言われていたのは、当時、南海トラフとか、西の方で、東北って、ちなみに・・ぐらいの扱いでしかなかったんだ。

うーん、竹内均が生きてた頃の「Newton」の地震特集にぐらい、リストに上がっていたかな。
秋篠宮殿下は、知識として、東北に地震があって元輔の歌があることを知っていた。
過去の記録や記憶について、少なくともオレなんかより敏感だったと言える。
そして多分、日本人のほとんどが、過去の記録や記憶に鈍感だったんだと思う。

もちろん、元輔の歌を覚えていたって、人の命は救えない。
でもさ、3.11の日に際して、秋篠宮殿下は元輔の歌を思い出したように、少し思い出しておく、できれば自分もさらに過去の記録、記憶、つまり古典を読んでおこうという気持ちになることって、人生のいろんな困難への心の準備にもなるんじゃないかな。

知っていることは、それだけで、その人の力なんだと思う。

ちなみに「かたみに」って、「蛍の光」にも出てくるな。
え、蛍の光、知らない?
メロディーは知ってるだろ? そう、あれの歌詞。
えー、知らないのー(笑)

■ 蛍の光 窓の雪
  書(ふみ)読む月日 重ねつつ
  何時(いつ)しか年も すぎの戸を
  開けてぞ今朝は 別れ行く

  止まるも行くも 限りとて
  互(かたみ)に思ふ 千万(ちよろず)の
  心の端(はし)を 一言に
  幸(さき)くと許(ばか)り 歌ふなり

1番は、貧しく何もないところで、ともに一緒に学んだ仲間と、学び舎の戸を開けて別れるのだ、ということ。

2番は、故郷に残る者も 去り行く者も、「今日が最後だな」と言って、互いに思い合い、何かを言おうとするんだけど、たくさんありすぎて、たった一言「幸(さきく)あれ」、無事にとか幸せにとかだけど、そう歌うだけなんだっていうこと。

この2番で「かたみに(互いに)」が出てくる。

この蛍の光は、また今度言うけど、そういう小さな言葉の知識でも、自分から知ろうとして覚えた言葉って、自分の人生にふっと生かされてくるんだ。

・・・

あ、こないだ面白い話を聞いた。

中国って、まあ、4000年の歴史ではなく、ずっと新しい国ができては滅びを繰り返してきた。
今の中華人民共和国は1921年からだから、100年前にできた国だ。
そして、1964年に、「簡体字」を中国の正式な文字にした。
門がまえが簡単になるぐらいならいいけど、「愛」の字の中の「心」がなくなって「友」になっちゃう(笑)
故郷の「郷」の字は、左側の糸へんみたいなのだけになっちゃう。

ふるさとと「糸」と、何か関係あるの?(笑)

で、まあ、「読めればいいや」ぐらいに考えとかないとやっていけないだろうな(笑)

でも、これって笑いことじゃないかも、という話。

「読めればいいや」は、今読めればいい、つまり、即物的衝動的になりやすいんじゃないかな。
愛って、友人関係程度のこと?
「一番真ん中に心がある」というイメージをもつことと同じなのかな、違うのかな。

まあ、これは、人それぞれの解釈であるからいいとして。

肝心なことは、一般の人の、過去の文章、古典を読む力がなくなるということではないか、という話をこないだ聞いて、ああ、そうかも!と思ったんだ。

オレたちが、3.11について、元輔の歌を思い出せなかったように、国民が過去の記録、記憶に鈍感になり、完全に忘れてしまっている。

それこそ、中国を「他山の石」にして、日本人は古典をもっと知ろうとする必要があるんじゃないかな。

・・

ともあれ、そろそろ3月11日を迎える。

今晩は、ゆっくり山口百恵でも聴いて飲むか。

■ 何億光年 輝く星にも 寿命があると
  教えてくれたのはあなたでした
  季節ごとに咲く 一輪の花に 無限の命
  知らせてくれたのも あなたでした

  Last song for you, last song for you
       約束なしの お別れです

  Thnk you for your everything
  さよならのかわりに 

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