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ぱっと開いてぱっと散る

釣りバカ、野球バカ、親バカ…世の中にはいろいろな「バカ」がありますが、わたしたちが誰かについてそう表現するとき、そこには多少の呆れとたっぷりの愛情が混ざっていると思う。釣りであれ野球であれ我が子の成長であれ、夢中になっても何ら問題がない対象だからかもしれない。子供のように、自分が好きなものに没頭する大人は魅力的だ。

「空に牡丹」に出てくる清助さんはとにかく大の花火道楽で、金に糸目をつけず花火に費やしかつては大地主だった家系を落ちぶらせてしまった。だけどそんな清助さんのことを悪く言う人はいない。清助さんの道楽のおかげで、何も無い普通の日にも花火を楽しめた村の人たち、清助さんののんびりとした性格に癒され(時には困らされ)た家族、皆が清助さんを好きだったから。読んでいて私も清助さんをどんどん好きになる。近所にいたら嬉しい、憎めない人柄の花火バカだ。

「消えてしまうからといって、なにがいけない。なあ、儂らの命があそこに見えると思ったらどうだ。ぱっと開いてぱっと散る。奇麗に散れたら嬉しいじゃないか。(204ページ)」清助さんのこの言葉がずっと頭に残る。

花火に魅せられた男の人生が時代の流れを反映させながら描かれている。清助さんの言う通り、人生は花火のようなものかも。パッと開いて、空いっぱいに自分の花を咲かせ、終わる時期が来たら静かに散ってゆく。自分自身が楽しむだけでなく周りの人の心も癒す綺麗な花火。そんな人生を送れたら最高。


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