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変じゃない!財政シミュレーション

 自治体の財源として一番なのは、自治体が自主的に収入できかつ自由に使える地方税です。しかし、大半の自治体は一定水準の行政サービスを行う財源を地方税の収入だけでまかなうことは事実上不可能となっています。

 そこで、行政サービスの一定水準の確保と地域間の税収の不均衡を調整する仕組みとして、地方交付税制度が設けられています。
 ひらたく言えば、国が自治体の財源不足(赤字)を交付金で埋めてくれる制度です。

都構想ではこの地方交付税制度が大きなポイントとなります。

 東京都の制度を見本にしましたので都構想でも「都区合算規定」という手法が適用されることになりました。これは、23特別区(府では4特別区)を一つの「市」とみなし、都(府)に合算し、都(府)がまとめて交付金を受け取るという規定です。税収入が豊かな東京都の場合は元々赤字がないので交付金を受け取ることはなく、この規定はあってないようなものとなっています。

 一方、元々が赤字である大阪府と大阪市の場合はこの地方交付税制度に頼っていますので、都構想では合計の赤字に対する交付金がまとめて大阪府に交付され、そのうえで財政調整により一定割合が大阪府から特別区に配分されることになっています。


しかしながら、ここに大きな問題が発生します。


 都構想では、大阪市が廃止され4つの特別区と1つの一部事務組合が新たに誕生します。そうなると4つの自治体(+1つの地方公共団体)の運営経費は大阪市1市の時と比べ当然増加することになります。

 ~ 一つの屋根の下で暮らしていた5人家族がバラバラに暮らした場合、住宅費や光熱費がそれぞれに必要となることを想像していただければ分かりやすいと思います。~

 法定協議会委員の川嶋市会議員(自民党)たちが独自に行った試算では年額約200億円の経費が増加するとしています。しかし、4つの特別区と1つの一部事務組合を「一つの市」とみなす規定が適用されるため、国からの交付金が増額されることはありません。国からしたら財源不足を埋めるために必要な交付金は「都区合算規定」にもとづき、大阪府に交付しているので関係ありません。たとえ特別区がその結果として財源不足になったとしても、それは府と特別区の問題であり、「あとはよろしく」ということになってしまいます。

 このことを裏付けるかのように、法定協議会で示された資料でも2016年度の決算に当てはめた場合として特別区全体で98億円、大阪府で51億円の財源不足に陥ることが記載されています。

 そんなこともあり、当初の10年間は20億円を特別区に「特別配分」するとしていますが~各特別区に20億円ずつではなく、全体で20億円という意味のようです~、このことを先の2016年度に当てはめた場合、それでも特別区全体で78億円の財源不足となりますので、これではまさしく「焼け石に水」です。

 法定協議会の資料には「(財源に)不足額がある場合は、配分割合に応じて特別区と府で行財政改革等の対応が必要」と非常に小さい文字で記載されています。

このことは、


「当初から深刻な財源不足となることは分かっています。そんなもの、職員を減らすなり、住民サービスを切り下げるなり、特別区の責任でなんとかしなさい」と言っているようなものです。

 都構想を推進している人たちは、「住民サービスの低下はありません」と声高に叫んでいますが、当初から少ないと指摘されている職員数をさらに減らさせ、「行財政改革」という名の経費削減を求める、このことを「住民サービスの低下」と呼ばずしてなんと呼ぶのでしょうか?

 このように財政制度上、大きな問題点を抱えることとなる都構想。


 特別区の財政が破綻して一番に苦しむのは、その街に暮らす住民です。


こんな都構想、絶対に実現させるわけにはいきませんでしょ


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